2015 Fiscal Year Research-status Report
セロトニン異常が関与する消化管疾患時における薬物吸収挙動の解析
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26460197
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
檜垣 和孝 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (60284080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河原 賢一 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (30291470)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸神経系 / セロトニン枯渇 / 経口吸収挙動 / 胃排出 / 腸移行速度 / bioavailability / 平均滞留時間 / 有機アニオン系化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
腸神経系 (enteric nervous system, ENS) において神経伝達物質として、また消化管ホルモンとして消化管の運動・機能に深く関わっているセロトニン(5-HT)の薬物吸収に及ぼす影響を明らかにするため、本研究では、5-HT異常のひとつである低セロトニン状態における薬物吸収挙動の解析を目指し検討を進めている。昨年度は、確立した5-HT枯渇ラットを用いて、有機アニオン系化合物phenol red (PR)の経口吸収挙動を検討し、PRの吸収性の有意な低下と、その要因の一つとして、有機アニオン系化合物の小腸管腔中への分泌を担うMrp2とBCRPの機能亢進の可能性を示唆するに至った。今年度は、PRの吸収性低下の要因をさらに解明するため、経口投与後の消化管内移行性の評価を行った。胃排出特性はPRの胃内残存率経時変化より、小腸内移行性はglass beads (粒子径 63-88 um)の移行性より評価し、それぞれの部位における平均滞留時間を算出した。その結果、5-HT枯渇ラットでは、PRの胃内滞留時間が対照群に比して約60%に減少することが示され、胃排出が促進されることが示唆された。十二指腸では、胃と同様に、glass beadsの平均滞留時間が対照の約46%となり、移行性が亢進していることが示された。一方、空腸上部以下では、回腸下部に至るまで、1.4倍から3.5倍の平均滞留時間に延長が見られた。この様に、5-HT枯渇により薬物の消化管内移行性が影響を受けることが明らかとなったが、特に小腸下部における滞留性の増大は、難吸収性薬物にとっては吸収時間の延長につながることから吸収率の増大につながると考えられるが、前年度に得られた結果からPRのbioavailabilityは低下することが明らかとなっていることからPRの場合、小腸滞留性の増大による受動拡散での吸収性増大効果よりも、Mrp2やBCRPを介した分泌増大の影響をより強く受けているものと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、計画していた5-HT枯渇時における経口投与後の化合物の消化管内移行性の変化を明らかにすることができた。また、その移行性変化と、昨年度明らかとなった5-HT枯渇ラットにおける有機アニオン系化合物の経口吸収性、経口bioavailability低下との関係を考察し、消化管内移行性の変化自体は、有機アニオン系化合物の経口bioavailability低下の要因ではないものと推察することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、5-HT枯渇時における有機アニオン系化合物の経口吸収挙動について、その詳細を検討していく。来年度は、特に、有機アニオン系化合物の投与量の相違による吸収挙動の変化を明らかにするとともに、吸収挙動の予測も試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究は概ね順調に進んでいる。今年度末において、少額が残ったので次年度分と併せて使用する予定。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既に記載してあるように、引き続き、5-HT枯渇時における有機アニオン系化合物の経口吸収挙動について、その詳細を検討していく。来年度は、特に、有機アニオン系化合物の投与量の相違による吸収挙動の変化を明らかにするとともに、吸収挙動の予測も試みたいと考えている。
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