2014 Fiscal Year Research-status Report
ソフトイオン化質量分析法を基盤とする乾燥ろ紙尿中ステロイドの臨床検査法の開発
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26460211
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
三田村 邦子 近畿大学, 薬学部, 准教授 (70242526)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | コレステロール / オキシステロール / テトラヒドロコルチコステロイド / 硫酸抱合体 / LC/MS / 尿中代謝物 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、尿中ステロイド代謝物測定のための基礎的検討を行った。 1.コレステロール及びその酸化成績体であるオキシステロールが硫酸抱合体に変換された後、尿中に排泄されていることが推測されることから、硫酸抱合型コレステロール及びオキシステロールのLC/ESI-MS/MSによる一斉分析法を構築した。すなわち、尿を疎水性-弱陰イオン交換ミックス固定相を用いる固相抽出による簡便な前処理後、Pulsed-Q dissociationモードでのLC/ESI-MS/MSにより脱プロトン化分子→硫酸イオンへの特徴的なトランジションを測定することが有用であることを見出した。また、コレステロールから生合成され同じ側鎖を有するビタミンDの代謝物である25-ヒドロキシビタミンD3の硫酸抱合体のヒト血漿中濃度測定法をLC/MSにより開発した。これより得られた知見は、今後尿中代謝物測定法開発上、有用な知見となる。 2.同一尿試料中における抱合型糖質コルチコイド代謝物30種のプロファイル分析法を開発した。すなわち、尿を疎水性-弱陰イオン交換ミックス固定相を用いる固相抽出によりグルクロン酸抱合体と硫酸抱合体に分画後、それぞれLC/MS分析に付したところ、マトリックス効果を受けず、満足のいく精度・正確度を有する測定法を開発することができた。また、本法を健常人尿に適用したところ、尿中排泄量に日内変動が認められ釣ることが明らかになった。このことは、今後、採尿時間にも考慮する必要があるなど、実用化に際しての有用な知見となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H26年度は1)LC/MSによる硫酸抱合型オキシステロール測定法の開発と2)LC/MSによる尿中抱合型糖質・鉱質ステロイド測定法の開発を計画していた。 1)に関しては、計画通りに進行した。すなわち、簡便な固相抽出のみの前処理法を開発するとともに、リニアイオントラップ型質量分析計の問題点であるlow mass cutoffを解決する方法として開発されたpulsed-Q dissociationモードでのMS/MSにより硫酸抱合型オキシステロール10種の一斉分析法の開発を達成し、さらに健常人尿中には硫酸抱合型コレステロールは排泄されているものの他のオキシステロール体はほとんど排泄されておらず、血中とは異なるプロファイルであることを明らかにすることができた。また、2)に関しては、糖質コルチコステロイドについては、グルクロン酸抱合体と硫酸抱合体の分画法と各抱合型のLC/MSによる直接一斉分析法の開発を達成することができた。これらの知見は、今後、乾燥ろ紙尿中ステロイド測定値の妥当性を検証するために必須の技術である。 一方、鉱質コルチコイドに関してはまだ、抱合体標品が得られていない。 以上の観点から、本年度は「おおむね順調に進展している」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は、26年度の研究で残った課題について進めるとともに、それらの結果を踏まえて当初の計画を実施していく。その際、以下の点について重点的に研究する予定である。 1.各種抱合型ステロイドを含有するモデル尿を塗布したろ紙(乾燥ろ紙尿)を作成し、ろ紙からのステロイドの抽出法について精査する。すなわち、ろ紙の種類、抽出溶媒の種類、抽出時間、抽出効率などについて、抽出液のLC/MS測定により明らかにする。また、乾燥ろ紙尿中ステロイドの安定性について精査する。すなわち、乾燥後の保管温度、保管時間、空気等の接触などによる影響について検討する。さらに、凍結尿と乾燥ろ紙尿によるステロイド測定を行い、乾燥ろ紙尿が臨床検査上有用な試料となり得るか評価する。 2.昨年度予定していた鉱質コルチコイドの合成には時間がかかることが予想されるため、他のアンドロゲン類を含むステロイドホルモンの尿中抱合型代謝物を入手または合成する。また、より高感度な検出を目的として三連四重極型質量分析計をもちいるLC/MS/MSの選択反応検出モードにおける最適コリジョンエネルギーを精査し、測定条件を確立する。
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Causes of Carryover |
研究の進行状況を見ながら器具、試薬等の発注を行っていたところ、当該年度内に発注したものの納品後の支払いが年度内に完了しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発注していた器具、試薬等はすべて納品されており、使用し始めている。これらと来意年度の助成金と合わせ、予定通り研究を行う。すなわち、消耗品として購入済みあるいは来年度購入する試薬類やガラス器具を用いて抱合型ステロイド標品の合成を進める。また、LC/MSの測定に必須の溶媒やバイアル、カラム、前処理用固相抽出カートリッジなどの購入、研究発表の費用等に使用する予定である。
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[Journal Article] 3.Development and validation of a method for determination of plasma 25-hydroxyvitamin D3 3-sulfate using liquid chromatography/tandem mass spectrometry.2014
Author(s)
Higashi, T, Goto, A, Morohashi, M, Ogawa, S, Komatsu, K, Sugiura, T, Fukuoka, T, Mitamura, K
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Journal Title
J. Chromatogr. B
Volume: 969
Pages: 230-234
DOI
Peer Reviewed
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