2015 Fiscal Year Research-status Report
抗癌剤による末梢神経障害の知覚痛覚定量分析装置を用いた客観的評価方法の確立
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26460230
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Research Institution | Iwate Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 淳也 岩手医科大学, 薬学部, 講師 (40616413)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 末梢神経障害 / パクリタキセル / 知覚痛覚定量分析装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
抗がん剤による末梢神経障害は、タキサン系抗がん剤の使用において問題となる副作用である。しかし、その発症までの期間や重症度にも個人差が大きく、患者の主観以外に評価方法がなかった。そこで本研究は、知覚痛覚定量分析装置(Pain vison; PS-2100N;ニプロ(株))を用いて化学療法による末梢神経障害を客観的に評価することを目的とした。
平成26年度から研究計画の倫理申請と患者登録を開始し、平成27年度中は症例集積と途中解析を行った。その結果、パクリタキセルを含む化学療法を受ける婦人科がん患者のうち化学療法未治療かつ糖尿病などの既往のない患者42例が集積され、治療前から最大6コース目までの手および足の末梢神経障害のグレード(CTC-AE ver4.0)を評価すると共に独自に作成した手指先専用プローブおよび足用のプローブ(EL-BAND)を用いて手および足の最小感知電流値と疼痛感知感電流値を測定した。これら数値から痛み度(Pain degree)=(疼痛感知感電流値ー最小感知電流値)÷最小感知電流値×100および痛み指数(Pain ratio)=疼痛感知電流÷最小感知電流値を算出した。
手については、末梢神経障害発現時の痛み指数および痛み度は、化学療法開始前に比べ有意な低下を認めた。一方、足についても、症状発現後に両指標が低下する傾向を認め、主観的な症状発現と関連していた。また、観察された末梢神経障害の殆どがグレード1の軽度であるにも関わらずPain visionによる検出は可能であった。Pain visionは、医療者評価による主観的なCIPN評価を補完する非侵襲的かつ簡便な客観的評価法となる可能性を認めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度から研究計画の倫理申請、試験を開始し、平成27年度中は症例集積と解析を行った。予定症例50例に対して、パクリタキセルを含む化学療法を受ける婦人科がん患者のうち化学療法未治療かつ糖尿病などの既往のない患者42例が解析対象として集積された。これら患者における中間解析も終了しており、Pain vison®による痛み度および痛み指数の低下は、症状発現と関連していた。Pain vision®は、医療者評価による主観的なCIPN評価を補完する非侵襲的かつ簡便な客観的評価法となる可能性を認めている。これら知見は、類似論文を見ず、有益かつ新規性の高い研究報告になると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
これら結果は、平成28年度中の国内がん学会発表および学術論文への臨床医学あるいは薬学系査読誌への投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
研究内容に参考となる学会が少なく、予定していた調査旅費が1回(東京)のみであった。また、物品(ディスポ電極)の消耗が少なく、予定より物品費も安価で済んだ。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究成果が出始めているので、最終年度内に調査および発表旅費や投稿に関する費用を計上する予定である。
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