2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒ素化合物とテトランドリン併用の乳がん治療への応用に関する基盤的研究
Project/Area Number |
26460233
|
Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
袁 博 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (10328552)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ヒ素化合物 / テトランドリン / 乳がん |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度に、乳がん細胞MCF-7、MDA-MB-231、および健常人由来末梢血単核細胞(PBMNCs)に対する亜ヒ酸ナトリウム(AsIII)およびテトランドリン(Tetra)の単独、および併用効果を以下のように検討した。①細胞毒性の観点からの検討:薬剤の単独および併用処理に対するPBMNCsの感受性が乳がん細胞より低い傾向が見られた。薬剤処理を受けたMCF-7細胞において、DNA断片化が観察されなかったが、PI/Hoechst33342陽性細胞が観察されたことから、ネクロシース細胞死が誘導されたことが示唆された。単独処理を受けた乳がん細胞におけるp38 MAPKリン酸化の促進、Aktリン酸化の抑制は、これらの経路が細胞死誘導に関与する可能性を示唆した。MCF-7細胞では、薬剤併用によるERαタンパク質発現量の減少が見受けられたが、DNAメチルトランスフェラーゼ(DNMT1,DNMT3a)タンパク質の発現が顕著な影響を受けていなかったことから、遺伝子メチル化の関与の可能性が低いと示唆された。②細胞分化の観点からの検討:Western blot法により、乳腺上皮細胞分化マーカーであるICAM-1の発現が検出できなかったことから、細胞の分化誘導の可能性が低いと考えられるが、FACS法によりさらに検討する予定である。③細胞の浸潤/遊走の観点からの検討:real-time PCR法により、浸潤/遊走に関係するMMP-2, -7, -9, -14、およびそれらの阻害因子であるTIMP-1, -2, -3のmRNAの発現を検討したところ、MMP-9の発現が薬剤の処理により顕著に減少したことが観察され、ゼラチンザイモグラフィー法を用いてさらに検討する予定である。また、トランスウェルアッセイおよびマトリジェル浸潤アッセイの実験系を確立した。また、動物を用いたin vivo実験条件を検討した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究目的に沿う形で実験研究が基本的に順調に進められている。平成26年度の研究計画に記載された実験研究内容(細胞毒性、細胞分化誘導、細胞の浸潤)をほぼ実施していたか、あるいは今後実施するための実験条件設定はほぼ完了した。薬剤処理後の健常人由来PBMNCs中のCD4+CD25+Foxp3+制御性T細胞(Treg細胞)のFACSによる解析条件の設定、細胞死誘導・細胞周期の制御に関連する遺伝子(bcl-2, bax, survivin, p53)のreal-time PCR解析条件の設定などが既に完了し、平成27年度中に詳しく解析する予定。特に当教室は平成27年度にBio-Rad社のreal-time PCR機械を購入したことにより、注目されている遺伝子mRNA発現の検討がよりスームズに進められると思われる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究成果を踏まえ、以下のように研究を推進する予定である。 平成27年度研究計画に記載された研究内容を実施する予定である。現在、BALB/cヌードマウスにMDA-MB-231乳がん細胞を接種し、担がんマウスを作製している段階である。次いで薬剤処理後の動物体重・腫瘍体積、AsIIIの体内動態などの検討をする予定である。 設定されたTreg細胞の解析条件に則って、AsIIIとTetra単独、および併用処理後の健常人由来PBMNCs中のTreg細胞の割合の変化を検討する予定である。 トランスウェルアッセイおよびマトリジェル浸潤アッセイ系を用いて、薬剤処理後の細胞浸潤・転移の変化を検討すると共に、real-time PCRおよびwestern blot法を用いて分子レベルで詳細に検討する。 AsIIIとTetraの併用処理において、AsIII単独処理に比較し、MCF-7細胞における細胞内ヒ素蓄積量(iAs)が有意に増加する結果が再度確認され、MDA-MB-231におけるiAsの変化に対する薬剤併用効果の影響を検討する。
|