2015 Fiscal Year Research-status Report
進行性乳癌の癌性皮膚潰瘍に対する皮膚貼付型ハイドロゲルの開発
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26460234
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部, 教授 (00302571)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 弥生 東京理科大学, 薬学部, 助教 (50711660)
飯嶋 哲也 山梨大学, 総合研究部, 講師 (70324209)
吉澤 一巳 東京理科大学, 薬学部, 講師 (00711532)
田口 光正 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (60343943)
廣木 章博 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10370462)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 電子線 / 疼痛緩和 / がん性皮膚潰瘍 / pH応答性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.薬物含有ハイドロゲルの調製:共同研究者である原子力機構にて水溶性高分子(ヒプロメロース:HPMC)に電子線を照射し、ハイドロゲルを調製した。今年度はハイドロゲル中に数種の薬物を実際に導入し、ハイドロゲルからの薬物放出挙動について検討した。まず、各種癌種および術後鎮痛剤として使用されているトラマドール塩酸塩をモデル薬物として含有させた際の放出挙動について検討したところ、照射線量の違いにより異なる放出挙動を示した。また、吸収促進剤としてプロピレングリコールを添加したin vitro 放出試験の結果から、経皮吸収促進剤を添加することにより薬物の皮膚透過量が増加することが明らかとなった。 2.トラマドールによる鎮痛効果の検討:ヘアレスマウスを用いた酢酸writhing法によりトラマドール塩酸塩含有ハイドロゲルの鎮痛効果を評価したところ、鎮痛効果はハイドロゲルに含浸させる薬物濃度に依存する傾向を示した。 3.pH応答性ハイドロゲルの調製:HPMCに加え、生体適合性およびpH応答性を有するポリアクリル酸(PAAc)を混合した水溶液に電子線を照射して調製したハイドロゲルの物性を評価したところ、PAAc濃度の増加に伴い、高いゲル分率を呈した。また、pH2.1および6.8における膨潤度を比較したところ、pH6.8の溶液において高い膨潤度を示し、pH応答性が認められた。さらに、モデル薬物としてメトロニダゾールを含浸させたハイドロゲルを調製し、薬物放出挙動を検討したところ、初期の速い放出に続き、ゆっくりとした放出が認められた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題はハイドロゲルの薬物担体としての応用の可能性を検証することであった。がん性疼痛緩和に用いられるトラマドールは通常、注射もしくは経口投与されるが、本研究ではハイドロゲルより放出され、皮膚を介して吸収され、鎮痛効果を発揮することがフランツセルを用いたin vitro実験およびヌードマウスを用いたin vivo実験を通して明らかにすることができた。さらに、生体適合性およびpH応答性を有するPAAcとHPMCを混合した水溶液に電子線を照射して調製したハイドロゲルの物性を評価したところ、周囲の液性(pH)に応じた性状変化を示した。本ハイドロゲルにがん性悪臭の除去に用いられるメトロニダゾールを含浸させ、その放出挙動を検討したところ、初期の速い放出に続き、ゆっくりとした放出が認められた。本実験系の放出挙動についてはさらに検討が必要であるが、ハイドロゲル適用部位の体液の性状に応じて物性を変化させることができるハイドロゲル調製が可能であることを見出したことは、次年度の実験の重要な基礎とすることができると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究より、メトロニダゾールとインドメタシンの共融混合物、メトロニダゾール、トラマドールなどの薬物をハイドロゲル中に含浸可能であることが明らかになった。一方、本研究課題の目標はがん表出部位の浸潤液を吸収しつつ、薬物を放出し、患者のQOLを向上することである。従って、次年度は浸潤液の吸収と薬物の放出問う二つの機能を合わせつハイドロゲルの調製に取り組み、動物実験のほか、最終的には日とへの臨床応用を目指した製剤設計を行う。
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Causes of Carryover |
2015年度は機器購入等により使用額に端数が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は請求額と合わせ、得られた成果の発表等に充当する予定である。
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