2014 Fiscal Year Research-status Report
ポリフェノール類の生体内での酸化抑制効果の比較とポリフェノール含有新規製剤の開発
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26460235
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
池内 由里(高橋由里) 星薬科大学, 薬学部, 講師 (10339525)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ポリフェノール / 過酸化脂質 / モリン / 固体脂質微粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病モデルマウスを用いて、ポリフェノールの酸化抑制効果について比較検討した。ICR系雄性マウスにストレプトゾトシンを投与し、糖尿病モデルマウスを作製した。糖尿病モデルマウスは無処置マウスと比べて肝臓内の脂質過酸化が亢進していることを確認した。糖尿病モデルマウスにモリン、レスベラトロール、クロロゲン酸の3種類のポリフェノール溶液を同モル濃度腹腔内投与し、ポリフェノールの脂質過酸化抑制作用を比較した。その結果、モリンおよびレスベラトロール投与群において、肝臓中の過酸化脂質が有意に低下し、中でもモリンにおいて強い脂質過酸化抑制効果が得られた。3種のポリフェノールを腹腔内に単回投与後、血漿中および肝臓中薬物濃度を測定した結果、モリンにおいて高い血漿中および肝臓中薬物濃度が確認された。モリンに関しては、肝臓において高い薬物濃度が維持できたことで、優れた脂質過酸化抑制効果が得られたと考えられた。 モリンにおいて高い脂質過酸化抑制効果が得られたことから、モリンは脂質の過酸化に関連する動脈硬化症などの疾患の予防および治療薬として有用となる可能性が考えられたが、モリンは難水溶性薬物であり、生物学的利用能が非常に低いことが指摘されている。そこで、経口投与においてモリンの生物学的利用能を高めることを目的に、モリン封入固体脂質微粒子製剤の開発を試みた。固体脂質微粒子製剤は、ハードファットを基剤とし、Tween60およびポリビニルアルコールを界面活性剤として調製した。調製した微粒子製剤の平均粒子経は約1μmであり、粒度分布において再現性のある製剤を調製することができた。さらに、薬物の持続的放出を目的としてハードファットにエチルセルロースを添加した製剤も調製した。本製剤においては、生物学的利用能の向上および作用の持続性が期待できることから、今後マウスを用いて評価する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病モデルマウスを用いて、ポリフェノールの酸化抑制効果について比較検討した結果、モリンおよびレスベラトロールにおいて有意な脂質過酸化抑制効果があることを明らかにし、さらに、モリンにおいては、レスベラトロールおよびクロロゲン酸と比較して、腹腔内投与後、高い血漿中および肝臓中薬物濃度を示すことが確認できたことから、モリンが脂質過酸化を抑制するポリフェノールとして有用性が高い可能性を見出した。以上の結果から、本研究が順調に進展していると考えられる。また、モリンは難水溶性薬物であり、生物学的利用能が非常に低いことが指摘されている。そこで、経口投与においてモリンの生物学的利用能を高めることを目的に、モリン封入固体脂質微粒子製剤の開発を試みた。基剤としてハードファットを用いて固体脂質微粒子製剤を調製した結果、平均粒子経が約1μmであるモリン封入固体脂質微粒子製剤が調製できた。さらに、ハードファットにエチルセルロースを添加した製剤についても調製し、その平均粒子径が約1μmであることを確認した。今後は本製剤をマウスに経口投与し、血漿中薬物濃度を測定することで、本製剤の有用性について評価する予定である。以上の結果から、モリンの製剤化についてもおおむね順調に進展している。 酸化ストレス亢進マウスを新規に作製することを目的に、硝酸銅とアスコルビン酸の混合液を調製し、マウスに腹腔内投与を行った。その結果、硝酸銅とアスコルビン酸の混合液を投与した群において、血中の過酸化脂質がわずかに上昇する結果が得られた。しかしながら、有意な差がみられなかったことから、脂質過酸化が亢進した動物モデルとしては、糖尿病モデルマウスを使用することが有用であると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
モリンは生物学的利用能が非常に低いことが指摘されていることから、経口投与における生物学的利用能を高める製剤として、モリン含有固体脂質微粒子製剤の開発を推進する。モリンを腹腔内投与後、血漿中薬物濃度を測定した結果、比較的速やかに消失する結果が得られたことから、モリンを持続的に放出する製剤の必要性が考えられた。そこで、固体脂質微粒子製剤の基剤としてハードファットを用いた製剤およびハードファットにエチルセルロースを添加した製剤を調製した。ハードファットにエチルセルロースを添加した製剤においては、モリンの持続的放出が期待できる。今後、調製した製剤からのモリンの放出性について、溶出試験器を用いて測定する。さらに、本製剤をマウスに経口投与したときの薬物動態について評価する。絶食させたマウスに本製剤を経口ゾンデを用いて投与する。対照として、モリンの原末を懸濁させた水溶液を経口投与する。一定時間経過後採血し、血漿中薬物濃度をHPLCを用いて測定し、AUCを算出することで、モリン原末と比較して製剤化することで生物学的利用能が向上していることを確認する。さらに、ハードファットにエチルセルロースを添加した製剤をマウスに経口投与することで、血漿中薬物濃度の持続性について評価する。モリン含有固体脂質微粒子製剤の有用性については、糖尿病モデルマウスを用いて評価する。調製した製剤を糖尿病モデルマウスに経口投与し、病態時に異常をきたしている血圧、血糖値、胸部大動脈の収縮および弛緩機能、生化学検査値について測定することで、改善効果について評価する。
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Causes of Carryover |
当該年度使用分については適正使用に努め、実験の段階に応じて必要となる試薬等を購入してきましたが、年度末になり試薬を追加購入しなくても実験が実施できたことから、少額が次年度使用額となりました。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額については翌年度分として請求した助成金と合わせて、今後必要となる試薬および消耗品等の購入費用とします。具体的には、モリン、メタノール等の有機溶媒、ストレプトゾトシン、ウルトラフィルター、メンブランフィルター、透析膜、ガラス器具等を購入する費用とします。さらに、HPLC用カラム、実験動物、生化学検査値測定キット等を購入するための費用とします。
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Research Products
(2 results)