2015 Fiscal Year Research-status Report
地域薬局を中心とした患者登録制度の構築とそれを活用した前向きコホート研究への利用
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26460236
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Research Institution | Meiji Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
赤沢 学 明治薬科大学, 薬学部, 教授 (80565135)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 長期処方 / 患者登録 / かかりつけ薬剤師 / 残薬対策 / 薬剤師介入 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年4月の診療報酬改定でかかりつけ薬剤師・薬局の機能評価が新設された。本研究は、その薬剤師業務について定量的エビデンスを作るために2013年11月からパイロット研究を、2015年5月から本調査を開始している。36日以上の長期処方を受けている慢性疾患患者のうち、薬剤師の介入が必要と考えられる患者を登録し、通院の有無にかかわらず薬剤師が電話等で定期的に連絡を取ることで、服薬状況の改善、患者不安の軽減、症状変化・副作用の早期発見・対策につなげることを目指している。2016年3月末時点で、全国97薬局が参加し、登録患者数は152例となっている。登録患者の背景としては、長期処方の原因疾患として高血圧症(73%)、脂質異常症(60%)、糖尿病(52%)を有しているものが多く、平均処方日数は64日(最大105日)、平均服薬剤数は8剤(最大19剤)である。現在追跡調査を継続中で、2016年末時点で登録患者の追跡状況について中間集計を行う予定である。参加薬局の薬剤師との連絡ツールとしてホームページ開設(http://piis.skr.jp)、ニュースレター毎月発行、ワークショップ開催(2015年10月)などを行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本調査を2015年5月に開始して、2016年3月末時点で全国97薬局が参加し、152例の患者が登録されている(目標症例300例のため、その達成度は51%)。参加薬局の多くは、既に地域医療の中でかかりつけ薬局として機能しており、薬剤師による介入が必要な長期処方患者が少ないことが、予定通り登録が進まないことの原因の一つと考えている。今後の予定としては、新規の参加薬局を増やして、目標症例に達するまでは患者登録を継続する。また、既に登録している患者の追跡調査にも力を入れている。追跡期間は最大11ヶ月で、追跡回数が10回以上の症例も増えてきているため、月1回の電話連絡等を継続的に実施して、介入成功事例を蓄積していきたい。更に、今年度末には中間評価を予定しており、登録時点での目標(服薬状況の改善や治療効果の向上など)がどの程度達成できたかを定量的に評価して行きたい。なお、本研究の成果は、主にパイロット研究の結果をまとめて、国際学会(2回)、国内学会(2回)、書籍などにまとめて発表すると共に、複数の専門雑誌等からの取材を受け、かかりつけ薬剤師のあり方などについて情報発信している。
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Strategy for Future Research Activity |
目標症例数を達成するために新規参加薬局を募集中である。アプライドセラピューティクス学会保険薬局委員会並びに保険薬局経営者連合会の協力を得て、薬剤師会や学術大会等の機会を利用して研究概要の説明会を行っている。また、既に参加している薬局でも患者登録が進まないところには個別訪問し、薬剤師やスタッフを交えた説明会も行っている。一方、追跡調査に関しては、システムを使ったデータ入力状況の管理を強化している。ニュースレター等を通じた情報提供並びに参加薬局への個別連絡を行い、データ欠損を出来るだけ減らす努力を継続中である。今年度は本研究の最終年にあたるため、薬剤師の介入効果を評価するために、薬剤師並びに患者向けアンケート調査を実施し、定量的評価を行うと共に、介入成功事例を集約することで定性的評価を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
新規患者登録の進捗状況が予定の半分程度であったため、一部経費が使用できなかった。今後は更なる参加薬局を増やすための説明会開催並びに、参加薬局への訪問を定期的に行うことで登録数の増加と追跡調査の継続を可能にしていきたい。また、参加薬局の薬剤師に成果を発表してもらう機会として9月にアプライドセラピューティクス学会学術大会(京都薬科大学)でシンポジウムを予定している。参加薬剤師への学会サポート費用として経費を使用していきたい。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究成果の評価を行うために、参加薬局の薬剤師を集めた中間報告会を秋に予定している。また、薬剤師並びに患者向けのアンケート調査を実施し、薬剤師介入効果を評価するためのデータ収集を行う。また、この患者登録制度は、最低10年間は継続して行く予定のため、次年度以降の研究計画並びに基盤整備のために経費を使っていきたい。
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