2015 Fiscal Year Research-status Report
神経発達過程におけるストレス負荷後の情動障害の発症脆弱に関わる機序解明と治療戦略
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26460240
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Research Institution | Meijo University |
Principal Investigator |
鍋島 俊隆 名城大学, 薬学部, 教授 (70076751)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野田 幸裕 名城大学, 薬学部, 教授 (90397464)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的敗北ストレス / 幼若期 / グルタミン酸作動性神経系 / N-メチル-D-アスパルギン酸(NMDA)受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達過程における環境的ストレスは精神疾患の発症リスクを高めるが、どのように脳機能や精神疾患の発症に影響を及ぼすかは不明である。本研究では、発達過程の幼若期マウスに環境的ストレスを負荷した時の神経および精神機能に及ぼす影響について検討し、その発現機序を解明することを目的としている。平成26年度には、発達過程である幼若期に環境的ストレスとして社会的敗北ストレスを負荷したモデル動物を作製し、抗うつ薬では緩解されない社会性行動の低下が惹起されることを見出した。その低下の発現には、視床下部-下垂体-副腎皮質系(HPA系)が重要な役割を果たしていること、脳内モノアミン作動性神経系の機能変化が関与していることを明らかにした。平成27年度では、臨床において治療抵抗性の気分障害患者に対して治療効果を示すドパミン作動性神経系や、グルタミン酸作動性神経系に作用する化合物の、幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスに認められる社会性行動の低下に対する反応性や、グルタミン酸作動性神経系を中心とした新たな発現機序について検討した。その結果、ドパミン作動性神経系でなく、グルタミン酸作動性神経系に作用する化合物は社会性行動の低下を緩解することを見出した。また、幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスに認められる社会性行動の低下の発現には、NMDA受容体サブユニットのNR2Aの活性化を介したextracellular signal-regulated kinase(ERK)シグナル伝達系が関与していることを明らかにした。平成28年度では、幼若期社会的敗北ストレス負荷後の神経組織学的変化やエピジェネティックな発現変化を検討し、これまでに見出されたHPA系、モノアミン作動性神経系、あるいはグルタミン酸作動性神経系に認められた神経化学的な変化との関連性について解析する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度に作製した幼若期社会的敗北ストレス負荷マウスにおける社会性行動の低下は、ドパミン受容体部分作動薬の単回および連続投与では緩解されなかったことから、ドパミン作動性神経系に作用する化合物でも治療抵抗性を示すモデル動物であることを明らかにすることができた。一方、幼若期マウスに社会的敗北ストレスを1回(10分間)負荷した場合に認められる社会性行動の低下におけるN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体の関与について検討した。その結果、①非競合的NMDA受容体拮抗薬のメマンチンを社会性行動試験前に単回投与すると社会性行動の低下は緩解された。NR2A遺伝子欠損マウスの幼若期に社会的敗北ストレスを負荷しても社会性行動の低下は認められなかった。②社会性行動の低下を示したマウスの前頭前皮質においてNR2Aのリン酸化タンパク発現量が増加していたが、NR2BやNR1のそれらではそのような変化は認められなかった。③社会性行動の低下を示したマウスの前頭前皮質においてextracellular signal-regulated kinase(ERK)のリン酸化タンパク発現量が増加しており、その増加はメマンチンにより抑制された。ストレス負荷したNR2A遺伝子欠損マウスではそのような増加は認められなかった。したがって、社会性行動の低下の発現には、NMDA受容体サブユニットのNR2Aの活性化を介したERKシグナル伝達系が関与していることを明らかにすることができた。 したがって、平成26年度において、平成27年度の研究推進方策予定にしていた、社会性行動障害に対するドパミン作動性神経系に作用する関連化合物や増強療法に対する反応性や、グルタミン酸作動性神経系を中心とした新たな発現機序については概ね検討できたものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
幼若期社会的敗北ストレス負荷後における精神行動障害と神経発達異常、セロトニントランスポーターの代謝異常やエピジェネティクスとの関連性について検討する予定である。また、幼若期社会的敗北ストレス負荷後の脳および血液サンプルを用いて、DNAマイクロアレイ法による遺伝子発現を解析し、新規ターゲット遺伝子を探索する。
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Causes of Carryover |
平成27年度においては計画にしたがって消耗品や試薬を購入していたが、平成28年度にはRNAやDNAを扱う実験が増えるために、その関連試薬を購入する予算に変更が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度には、幼若期社会的敗北ストレス負荷後におけるDNAマイクロアレイ法による遺伝子発現を解析するなど、さらにRNAやDNAを扱う実験が増えるため、そのための試薬の購入を計画的に行う予定である。
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[Journal Article] Prenatal nicotine exposure impairs the proliferation of neuronal progenitors, leading to fewer glutamatergic neurons in the medial prefrontal cortex2016
Author(s)
Aoyama Y, Toriumi K, Mouri A, Hattori T, Ueda E, Shimato A, Sakakibara N, Soh Y, Mamiya T, Nagai T, Kim HC, Hiramatsu M, Nabeshima T, Yamada K
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Journal Title
Neuropsychopharmacology
Volume: 41
Pages: 578-589
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Arachidonic or docosahexaenoic acid diet prevents memory impairment in Tg2576 mice.2015
Author(s)
Hosono T, Mouri A, Nishitsuji K, Jung CG, Kontani M, Tokuda H, Kawashima H, Shibata H, Suzuki T, Nabehsima T, Michikawa M
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Journal Title
J Alzheimers Dis
Volume: 48
Pages: 149-162
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Deletion of SHATI/NAT8L decreases the N-acetylaspartate content in the brain and induces behavioral deficits, which can be ameliorated by administering N-acetylaspartate2015
Author(s)
Toriumi K, Mamiya T, Song Z, Honjo T, Watanabe H, Tanaka J, Kondo M, Mouri A, Kim HC, Nitta A, Fukushima T, Nabeshima T.
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Journal Title
Eur Neuropsychopharmacol
Volume: 25
Pages: 2108-2117
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] The piccolo intronic single nucleotide polymorphism rs13438494 regulates dopamine and serotonin uptake and shows associations with dependence-like behavior in genomic association study.2015
Author(s)
Uno K, Nishizawa D, Seo S, Takayama K, Matsumura S, Sakai N, Ohi K, Nabeshima T, Hashimoto R, Ozaki N, Hasegawa J, Sato N, Tanioka F, Sugimura H, Fukuda KI, Higuchi S, Ujike H, Inada T, Iwata N, Sora I, Iyo M, Kondo N, Won MJ, Naruse N, Uehara-Aoyama K, Itokawa M, Yamada M, Ikeda K, Miyamoto Y, Nitta A.
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Journal Title
Curr Mol Med.
Volume: 15
Pages: 265-274
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Blonanserin ameliorates phencyclidine-induced visual recognition memory deficits:The complex mechanism of blonanserin action involving D3-5-HT2A and D1-NMDA receptors in the mPFC.2015
Author(s)
Hida H, Mouri A, Mori K, Matsumoto Y, Seki T, Taniguchi M, Yamada K, Iwamoto K, Ozaki N, Nabeshima T, Noda Y.
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Journal Title
Neuropsychopharmacology
Volume: 40
Pages: 601-613
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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