2014 Fiscal Year Research-status Report
薬剤師に関わるディスコミュニケーションの研究-ヒューマニズム教育構築に向けて-
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26460241
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Research Institution | Kyoto Gakuen University |
Principal Investigator |
伊原 千晶 京都学園大学, 人間文化学部, 准教授 (80288589)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松村 人志 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (50173886)
松島 哲久 大阪薬科大学, 薬学部, 名誉教授 (60209541)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 薬学教育 / 臨床心理学 / 応用倫理学 / 国際情報交換 / ドイツ:アメリカ:フランス / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
研究開始初年度であるため、まず研究代表者・研究分担者・連携研究者が一堂に会して話し合い、相互の課題認識を共有し、実際的な研究のロードマップを作成した。初年度の目標として、現場で発生している問題=臨床素材の収集に努めることとし、薬剤師および薬学生を対象とした質問紙および面接調査を実施することを決定した。 薬剤師対象の調査としては、申請時の研究代表者・研究分担者・連携研究者に加えて、大阪薬科大学から2名連携研究者を追加して、臨床心理学的・精神医学的・倫理学的な観点から、薬剤師が遭遇する可能性のあるディスコミュニケーション場面を想定した具体事例55項目を作成し、そういった経験の有無についての質問紙調査を計画した。調査対象として、ディスコミュニケーションを体験している可能性が高いと考えられた在宅薬剤師を選び、在宅薬学会会長に調査依頼した。関連会社において、ネット上に質問紙をアップし、調査を実施することが可能であることがわかったため、作成した質問紙を日本在宅薬学会のホームページ上に公開して、会員による回答を依頼した。同時に面接あるいは電話調査の依頼も行った。現在調査は進行中であり、結果の分析が待たれる。一方、薬学生対象の調査については、26年度中に実施できなかった。 文献や海外視察による研究については、倫理的な課題について、心理臨床場面での倫理的課題の教育方法を参考にするため、参考図書を購入し、文献研究を行った。また海外での薬学教育の在り方を知るため、ドイツ・ハイデルベルグ大学薬学部スタッフにインタビューして、コミュニケーション教育についての取り組みを調査した。 シンポジウムについては、薬剤師でもある弁護士による基調講演を中心とした企画を実施する予定であったが、日程の都合がつかず次年度に持ち越しとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全体の研究計画立案の時点までは順調に進展したが、構成員が多忙であることも有り、薬剤師を対象とした調査については、質問紙の項目作成にかなりの時間を要してしまった。またネット調査として実施することを決めたが、在宅薬学会から指定を受けた、ホームページを構築する会社のかなりの不手際のため、調査の開始が実質的に年度末となってしまった。このため、データの分析を行うことができておらず、次のステップに進めていない。面接調査についても、この質問紙調査の対象者に対して実施する予定であったため、結果として、一例も面接を実施できていない。 しかし、調査の大枠は既に出来上がっており、また質問紙については、ネット調査である分、結果入力の手間もないため、今後はある程度の進展が見込める。 薬学生対象の調査については、実習時期がバラバラであり、また実習前後に一堂に会する機会があるかどうかが大学ごとに異なるため、どのタイミングで誰を対象に調査を実施するかについて実際的な課題があり、実施に至らなかった。 一方、文献研究や海外視察など、臨床素材を集めるという部分以外では、一定の進展をみた。
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Strategy for Future Research Activity |
薬剤師を対象として、臨床素材を集める、という課題については、現在のところ、有効回答数が伸び悩んでいるため、在宅薬学会のみならず、大阪府・京都府・滋賀県など近隣の薬剤師会にも調査を依頼して、薬剤師に関わるディスコミュニケーションの実態に関するデータを蓄積する。それと共に、面接あるいは電話調査によって、より詳細な情報の収集を試み、それらも加味して、薬剤師が対応を求められるようなディスコミュニケーション状況の架空事例を作成し、次の調査を実施する。 薬学生を対象とする調査については、早急に実施可能な時期と対象者を決定し、各大学の倫理委員会に研究実施を申請し、データ収集に努める。 一方、海外との比較研究においては、アメリカの薬剤師教育を調査するとともに、薬剤師に類縁の医学教育についても、ドイツおよびアメリカの実態を調査し、教育内容の検討の際に利用する。 文献研究においては、主に海外の臨床心理学的・倫理学的な教育内容について調査し、まとめる。 また一般市民の啓蒙のためのシンポジウム開催を企画し、研究代表者が勤務する大学のホールで実施する。
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Causes of Carryover |
申請時の研究計画においては、研究内容の公開と広く市民の啓蒙のために、「薬剤師とヒューマニズム」をテーマとしたシンポジウムを開催する予定であった。しかし調査研究そのものの進捗が思わしくなかった上に、講師の都合もあり、2014年度中に開催することができなかった。 また薬学生を対象とした調査も実施できなかったため、質問紙印刷・郵送費・データ入力や整理の人件費なども発生しなかった。一方旅費については、他の助成金から支出した部分が大きく、科研費からの支出は少なかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は上記のシンポジウムを開催し、広く薬剤師の職能について啓蒙活動を行う予定である。また、薬学生対象の質問紙調査についても、今年度中の実施に向けて努力する。 旅費については、今年度からは他の助成が無くなるため、科研費からの支出が予定通り行われることになる。
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