2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞運動/増殖の制御による軸骨格の部域特異的形態形成:胚操作および培養実験系
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26460254
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
青山 裕彦 広島大学, 医歯薬保健学研究院, 教授 (70143948)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 体節 / 側板中胚葉 / 細胞間相互作用 / in vitroモデル / 接触阻害 / 形態形成 / 部域化 / 軸骨格 |
Outline of Annual Research Achievements |
概要 脊椎動物のうちでも,哺乳類や鳥類では体幹が胸部と腹部/腰部に分化している.それは肋骨形成が胸部に限定されるという形で現れている.肋骨は椎骨同様,体節に由来する.体節は,その形成時にはすでに,肋骨形成能の有無が決定されている.一方で,環境因子も肋骨形成を左右する.我々は,肋骨形成能を持つ胸部体節を腰部に移植した時,正常より短い肋骨が形成されること,それは,体節細胞の移動が側板中胚葉に侵入できないことによることを見出している.本研究は,体節細胞と側板中胚葉細胞の挙動から,それらの部位特異的相互作用の実態を明らかにしようとする. 体節細胞と側板中胚葉細胞とのin vitro衝突実験:胸部と腰部から,それぞれ体節と側板中胚葉壁側板を単離し,同じ部位のものどうし,異なった部位のものどうしを組み合わせて培養した.培養はサイトグラフ(大日本印刷)を用いて,限られた基質の上で一次元的に遊走するようにした.この系を用いて,細胞どうしが接触した後,そのまま前進するか後退するかを定量的に測定した.胸部体節細胞は,腰部側板細胞に接触すると進行方向を変え逆に進む.これは生体内で見られた,腰部に移植した体節由来の細胞が側板内に侵入できなかったことを反映しているものと考えられる.一方,腰部体節細胞と腰部側板細胞間にはこのような現象が見られなかった.腰部体節細胞は遊走そのものが活発でなかったこともその一因と考えられる.これは,腰部体節細胞には肋骨形成能がないことの反映であるとも言える. 胚における体節細胞の移動:側板中胚葉壁側板の最も内側を一時的に切り離すと肋骨の胸骨部のみ形成されない.体節細胞は側板の傷口が修復されたのち,側板内に侵入していくにもかかわらず,形成されるのは椎骨部のみである.胸骨部は側軸部であり,その形成には側板が関わっているため,両者の関係を追求している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
理由 1.In vitro実験系:一次元培養実験系は確立されたが,一時には1標本しか扱えないため,時間がかかってしまう.培養そのものの数を増やすのは問題ないが,それを記録するためには,倒立顕微鏡に培養装置とタイムラプス写真撮影装置を装着したものが必要である.現在,これを1セット使用しているが,このセットの増設はあまり現実的ではない.対照実験も含めて複数のポイントを同時にとろうとすれば 10セットは必要になるからである. 2.胚内の体節細胞の移動と側板中胚葉:これまで,体節はGFPの遺伝子導入により標識し,側板はDiIで標識してきた.GFPは胚発生の過程を通じて発現し続けるが,DiIは徐々に信号が弱くなり,また細胞外への拡散もあるようで,標識領域と非標識領域との境が必ずしも明瞭ではない.体節細胞が側板中胚葉と接触しているかどうかを調べる必要があるため,この境界が不明瞭では確定的なデータが得られない.そのため足踏み状態にある. 3.肋骨原基の細胞増殖部位:非常に基礎的データである.特定の時期の細胞増殖を調べるため,取り込まれたEdUにクリック反応で蛍光色素を結合する方法を用いる研究を始めたところである.EdU溶液を,初期胚では卵殻内で胚を露出させ,その上から添加し,発生の進んだ胚(卵黄嚢動静脈が発達した胚)では,卵黄嚢静脈に注入した.この方法でDNA複製の検出は問題なくできた.ニワトリ3-5日胚を用いた予備的研究では部域による増殖の差は見られなかった.さらに発生段階を追って検討する必要がある.
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Strategy for Future Research Activity |
方策 1.In vitro実験系:一次元の実験系では,設備上,同時に多数のデータを取ることができない.同時に多数の培養を扱える方法の開発を検討中である.体節と側板を2次元培養すると.その境界に特異的なパターンが生成する.それぞれの細胞の挙動のうち,どの要素が,このパターンに結びつくのか,それを明らかにするための数理モデルを作りたい.これは,単に便宜上のことではなく,in vitroで明らかにされたことを胚に適用するためにも必要なことである. 2.胚内の体節細胞の移動と側板中胚葉:これまで,体節はGFP遺伝子導入による永続的な標識を確立しているが,側板中胚葉の臓側板と壁側板についてもそれぞれ標識できるようになった.そこで,一方にDsRedを用いて標識し,追跡しようと計画している.これまで,一方を蛍光色素にした理由は,遺伝子導入が胚に障害を与えるため,2度の導入が胚の生存率を低くすることを恐れたためである.経験を積むことにより,生存率が向上したこともあり,また,曖昧な結果を積み重ねるより,少数例であっても明瞭な結果の方が結果的には生産的であることから2重の遺伝子導入を行うことにした.現在,プラスミドの準備中である. 3.肋骨原基の細胞増殖部位:EdUとクリック法による増殖細胞の標識法は確立できたので,発生段階を追って,各部位の増殖を検討する.肋骨の形成を追って,増殖部位を同定すること,また,頭尾軸に沿って部域間で,体節およびその派生物について増殖能の差を検討する.
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Causes of Carryover |
論文の英文校閲のため残していたものが,年度末までに原稿ができなかったため,次年度に使用することにした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度分は予定通り,ニワトリ受精卵,試薬,器具の購入,さらに,繰り越し分を含めて論文の英文校閲の謝金に充てる.
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