2015 Fiscal Year Research-status Report
分泌細胞における細胞極性の再定義:ゴルジ装置の大局的構造を新たな指標として
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26460263
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
渡部 剛 旭川医科大学, 医学部, 教授 (80220903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ゴルジ装置 / 甲状腺濾胞上皮細胞 / 分泌細胞 / 中心小体 / 微小管 / コルヒチン / 免疫組織化学 / 電子顕微鏡観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、分泌細胞において分泌経路を構成する粗面小胞体、ゴルジ装置、分泌顆粒などの小器官の大局的構造や細胞内配置の秩序に着目して、多様な分泌細胞を整理・類型化する新たな分類理論が構築できないか模索している。平成26年度には、双方向性の分泌動線を持つ甲状腺濾胞上皮細胞に着目して、同細胞のゴルジ装置が特異な環状の形態をとることを明らかにした。 この研究成果を踏まえて、平成27年度には、ゴルジ装置の形状の維持に重要な役割を果たす細胞内の微小管構築の特徴を、甲状腺濾胞細胞を材料として免疫組織化学法を用いて検討した。その結果、細胞内で微小管の起点となる中心小体は、外分泌細胞同様、甲状腺濾胞上皮細胞の濾胞腔側の細胞膜直下に局在していた。微小管は、ここから、まず水平に網状の構造を作り、その後、細胞の縁で向きを変えて、細胞長軸に沿い基底側に向かって走行することがわかった。濾胞腔側から基底側に向かう微小管束の大部分は、細胞側壁に沿って環状のゴルジ装置の外側すなわちcis側を走行するが、ゴルジ装置のtrans側である環状の構築の内側を経由して基底側に向かう微小管も認められた。以上の観察結果は、甲状腺濾胞上皮細胞が内分泌細胞よりむしろ外分泌細胞に似た微小管構築を示すことを示唆している。この観察結果を踏まえて、平成27年度中には、さらに微小管を破壊する作用を有するコルヒチンをラット腹腔に投与した動物モデルを作成し、現在、微小管破壊後に甲状腺濾胞上皮細胞や他の分泌細胞におけるゴルジ装置の形態が経時的にどのように変化するかを解析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の2年目に当たる平成27年度には、平成26年度の研究成果を発展させて、甲状腺濾胞上皮細胞の特異な環状のゴルジ装置の形態の形成原理を明らかにしようと考え、ゴルジ装置の形態の形成・維持に深く関与すると考えられている微小管の細胞内構築について検討を開始した。この結果得られた知見は、2015年8月に盛岡市で開催された第61回日本解剖学会東北・北海道連合支部学術集会(研究発表欄の学会発表(1))で報告した。さらに、本研究課題で得られた甲状腺濾胞上皮細胞の特異なゴルジ装置構築に関する研究成果を中心に、分泌細胞におけるゴルジ装置構築の多様性とその構築原理について、2016年3月に郡山市で開催された第121回日本解剖学会全国学術集会の日本解剖学会/生理学会合同シンポジウム(研究発表欄の学会発表(2))で発表した。このように、計画調書の研究計画欄に記載した解析やその知見をもとにした新たな理論構築は順調に進んでおり、本研究課題の平成27年度の達成度については「おおむね順調に進展している」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度に当たる平成28年度には、これまで作成してきた対照群および各実験群ラットの分泌組織の形態学用解析標本の解析をさらに進め、甲状腺濾胞上皮細胞の特異なゴルジ装置構築を軸にして分泌細胞の分泌動線とゴルジ装置構築の特徴との関連性について得られた知見を論文にまとめ国際的な学術雑誌に投稿する。また、これまでの解析結果から、ゴルジ装置の構築と分泌動線の秩序維持には、細胞内の微小管構築が重要な役割を果たしていることが示唆されたので、平成28年度には、微小管を破壊するコルヒチンが甲状腺濾胞上皮細胞や他の分泌細胞の多様なゴルジ装置構築に与える影響を組織/細胞横断的に解析し、生体における分泌細胞の多様性を加味した観点から、微小管依存性の細胞内小胞輸送とゴルジ装置構築の関係性について、これまでの単離培養細胞での知見を元に構築されてきた作業仮説の妥当性を検証していく。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究計画遂行のために調達した消耗品が、当該年度始めの時点で想定していた価格より安く購入できたため、年度末の精算時に若干の残額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額分は平成28年度の当初計画金額分の助成金と合わせて、平成28年度の研究遂行に必要な物品の購入に充当する。
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Research Products
(3 results)