2015 Fiscal Year Research-status Report
移植治療への応用を目指した機能性3次元積層リンパ管組織のエンジニアリング
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26460264
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
浅野 義哉 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50359494)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下田 浩 弘前大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20274748)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 三次元積層培養技術 / 人工脈管ネットワーク / リンパ浮腫 / 再生医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 細胞集積法により作製した人工ヒト血管ネットワーク組織のヌードマウスへの移植、生着、およびホスト脈系との吻合を確認した研究成果について論文を公表した(Asano Y et al., J Tissue Eng Regen Med , doi: 10.1002/term.2108, 2015)。 (2) 同手法で作製した人工ヒトリンパ管ネットワーク組織のヌードマウスへの移植については、背部、臀部、腹壁の皮下および筋膜上、さらに腋窩、膝窩への生着を確認した。また、レシピエント組織との同化に伴うヒト細胞の増殖と組織構築を確認した。光顕および電顕による解析では、生着したヒトリンパ管は毛細リンパ管様の形態を示し、一部に平滑筋アクチン陽性の平滑筋様細胞の付着を認めた。さらに興味深いことに、生着した人工ヒトリンパ管の近傍で血管ネットワークが形成されることを見出した。これらはヒト血管内皮マーカーに陽性を示し、平滑筋様細胞が壁細胞様に管腔を取り巻いて小血管に類似した構造を形成していた。さらに、血液の流入が認められたことから宿主循環系との吻合が強く示唆された。これらより、人工リンパ管の生着と、リンパ管-血管転換を含む機能的な成熟を示す結果を得た。 (3) マウスリンパ浮腫モデルの作製を目的として膝窩リンパ節および腸骨下リンパ節の郭清を行い、後肢の腫脹によるリンパ浮腫の形成を確認した。同時に、ICGの投与とIn vivoイメージングにより、足底-膝窩-臀部(外側仙骨リンパ節)に至るリンパ流を可視化した。しかし、上記リンパ浮腫は側副流路の形成により早期に回復することが判った。本モデルを人工脈管組織移植によるリンパ浮腫治療評価系として用いるためには、更なる浮腫症状の誘導を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では、当初In vitro組織構築での遺伝子導入による人工血管/リンパ管構造の改良とリンパ浮腫治療への応用を目的としていた。しかしこれまでの結果から、改変を加えていないヒト線維芽細胞とリンパ管内皮細胞から成る人工脈管組織の皮下/筋膜上移植により、脈管構造が生体内で予想以上に機能形態的に成熟しうることが判った。近年の人工組織を用いた再生医療研究では、生体内微小環境における組織同化と形態的・機能的成熟についての報告も多くみられる。さらに人体への移植も鑑みて、本人工脈管組織の再生医療への応用に関しては、遺伝子導入によるin vitroでの脈管構造改善に比べ、移植後のレシピエント生体内成熟の検討がより有効であるという方針に至った。現在、移植後に生体内成熟を経た人工ヒト血管およびリンパ管の機能形態、宿主脈管系との吻合、リンパ液排導機能、およびリンパ管-血管転換機構について解析を進めている。マウスリンパ浮腫モデルの作製については、膝窩リンパ節郭清後の後肢腫脹とin vivoリンパ流イメージングによる評価系を開発しているが、人工脈管組織移植の効果を検討するには更なる浮腫症状誘導のための方策を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
(1) これまでの結果から、細胞集積法により作製した人工脈管ネットワーク組織の移植後、宿主生体内での機能形態的な成熟が示唆された。この過程では、ヒト線維芽細胞由来の平滑筋様細胞が人工ヒト血管・リンパ管構造の周囲に壁細胞様に付着し、脈管構造成熟に与ることが判っている。今後は、組織構築過程におけるヒト平滑筋細胞および周皮細胞の添加と生体内成熟により、更に生体と同等の機能形態を持つ脈管の形成を検討する。また、今回見出した移植人工リンパ管の生体内リンパ管-血管転換現象については、リンパ浮腫患部におる余剰組織リンパ液のリンパ管-血管系排導路構築の可能性を示すばかりでなく、脈管の発生および再生機構の解明に関わる重要な知見をもたらすと考えられる。これについては、脈管形成・新生関連分子のノックダウンと移植脈管の分子形態学的な解析により、メカニズムの解明に迫りたいと考えている。 (2) 後肢リンパ流路近傍皮下への人工リンパ管ネットワーク組織の移植では、graftを指向したリンパ流路の新生を認め、本人工組織によるリンパ流路誘導能が示唆された。この強化による機能性人工脈管組織の確立を目的として、リンパ管誘導能が報告されている肝細胞増殖因子(HGF)の移植組織における発現亢進を検討している。 (3)マウスリンパ浮腫モデルについては、現状の後肢リンパ節郭清に加えX線照射により浮腫症状をさらに誘導し、治療評価モデルとして早期に確立する。 最終年度は上記方策遂行のために研究費を有効に使用し、人工脈管ネットワーク組織移植によるリンパ浮腫治療につながる成果を得たい。
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Causes of Carryover |
人工ヒト脈管構造の生体内成熟検討へ研究の方針を調整したことにより、遺伝子導入実験について先送りとなっている。このため、遺伝子導入関連の試薬、消耗品において未購入の物品があるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今後、人工脈管組織へのリンパ管誘導能付与を目的とした遺伝子導入、および生体内成熟機構解明を目的としたノックダウン実験に用いる試薬と消耗品のため、次年度使用額の研究費を使用する予定となっている。
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Research Products
(3 results)