2015 Fiscal Year Research-status Report
LPS,炎症性サイトカインと末梢CRF受容体サブタイプの消化管機能における相関
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26460287
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
野津 司 旭川医科大学, 医学部, 准教授 (30312367)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥村 利勝 旭川医科大学, 医学部, 教授 (60281903)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | CRF / 内臓知覚 / dopamine / IL-1 / ストレス |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸伸展をラットで負荷すると,伸展直後に内臓知覚過敏が出現するが,これは末梢のCRF受容体を拮抗することで阻止することができた.この過敏状態は,48時間後には消失したが,7日後には再び内臓知覚過敏が出現することが明らかとなった.この反応はCRF受容体拮抗薬では阻止できず,IL-1受容体拮抗薬のアナキンラの投与で阻止された.以上より大腸伸展ストレスは急性,遅発性の内臓知覚過敏を誘導し,それには末梢CRFとIL-1がそれぞれ関与することが明らかとなった.IBSでは,大腸の微小炎症,炎症性サイトカインが病態に関与することが知られており,大腸伸展による遅発性内臓知覚過敏モデルは,IBSの病態をシミュレートする新しいストレスモデルになり得ると思われる.本研究はJ of Gastroenterologyに掲載済みである.Water avoidance stress(WAS)は古典的な精神的ストレスモデルであるが,WASを急性に負荷すると内臓知覚の鈍麻が誘導され,この反応は,末梢CRFタイプ2受容体と中枢のドパミンD2受容体を介する反応であることを明らかにした.IBSでは疼痛の下行抑制系の障害が指摘されているので,今回の結果でCRF,ドパミンが内臓痛抑制系に関与している可能性が明らかとなり,これらはIBSの病態に関与している可能性があることを示している.本研究は,Neurogastroenterology and Motilityに掲載済みである.さらにこれまでのCRF関連の仕事のまとめとして,レビュー論文Corticotropin-releasing factor receptor type 1 and type 2 interaction in irritable bowel syndromeを作成し,これもJ of Gastroenterologyに掲載済みである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
IBSのストレスモデルとして,今年度は上記のように2つのモデルを確立することができた.また,それぞれのモデルでCRFの関連性を明らかにすることができた.また炎症性サイトカインもストレスによって誘導される内臓知覚過敏に関与していることも示すことができた.これらは直ちに論文として,国際ジャーナルに投稿,採択され成果を公に示している.さらに成果の一部は2015年11月12-13日に行われた,神経消化器病学会のシンポジウムに採択され,発表を行っている.
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Strategy for Future Research Activity |
CRF受容体と炎症性サイトカインのリンクを,さらなるストレスモデルで明らかにしていく予定である.また運動,感覚機能のみではなく,腸管permeailityの測定系も現在確立途中であり,これが問題なく測定できるようになれば,このパラメータを使った評価も可能となり,CRF,炎症,サイトカインのクロストークについて,さらなる探索が可能になり得る.
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Causes of Carryover |
当初の予定では必要とされた実験器具(特にコンピュータ関連)を購入しなくても,実験の遂行が可能であることがわかり,購入していないことがその理由である.また論文校閲に関わる経費も,自己努力により英語論文作成スキルが向上したので,不必要になった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の実験計画から,様々な予期せぬ新しい知見が得られるようになり,新しい実験が新たな計画の元に行われている.このような研究の新展開に,経費を臨機応変に使用する予定である.
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