2015 Fiscal Year Research-status Report
血管内皮機能に必須なPI(3)P代謝酵素によるメンブレン・トラフィック制御
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26460292
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
吉岡 和晃 金沢大学, 医学系, 助教 (80333368)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞内小胞輸送 / 血管内皮細胞 / PI3キナーゼ / ノックアウトマウス / PI(3)Pホスファターゼ / 粥状動脈硬化 / 血管透過性 |
Outline of Annual Research Achievements |
ホスファチジルイノシトール(PI)3-キナーゼ(PI3K)は、イノシトール環3位の水酸基のリン酸化を行う脂質リン酸化酵素である。PI3K は3 つのクラス(I, II, III)からなる。当研究室では、機能が不明であったクラスII α 型PI3K アイソフォーム(PI3K-C2α)の機能解明を目的に、全身型PI3K-C2α 遺伝子欠損(KO)マウスおよび血管内皮特異的PI3K-C2α コンディショナルKO(PI3KC2α-eCKO)マウスを作製して解析した結果、PI3K-C2α KO マウスは胎生期の血管形成不全により胎生致死となり、内皮のPI3K-C2α が血管形成に必要であることを見いだした。さらに、生後のマウスにおけるPI3K-C2α の役割を検討するため、タモキシフェン(Txf)誘導型PI3KC2α-eCKO マウスを作製したところ、血管透過性の亢進やアンギオテンシンⅡ投与による解離性大動脈瘤の形成などの異常が観察された。これらのことから本年度は、PI3K-C2α 欠損による内皮機能低下は粥状動脈硬化の発症にも関与する可能性を考え、Txf 誘導型PI3KC2α-eCKO を用いて粥状動脈硬化モデルマウスを作製し、内皮PI3K-C2α 欠損が粥状動脈硬化に及ぼす影響を検討した。 全身型およびTxf 誘導型PI3KC2α-eCKO マウスでは、コントロールマウスと比較してプラーク形成が亢進した。PI3KC2α-eCKO マウスの大動脈では、1)プラーク形成初期に発現する接着分子ICAM-1 mRNA 発現量の増加 2)血管外膜Vasa vasorum の増加 3)Vasa vasorum 内皮細胞におけるICAM-1 発現および血管透過性亢進、が認められた。以上の結果より、PI3K-C2α はプラーク形成初期における内皮障害に対して保護的に働くことが示唆された。 本研究により得られた成果は、今後の“内皮機能保護”を作用機序とする新規な粥状動脈硬化治療法の開発にとって重要な知見となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度に計画した項目のうち、上述した内皮機能障害型「動脈硬化」発症プロトコールの確立および、その発症機序の解析に関しては概ね順調に進めることができた。 しかしながら、血管内皮細胞にけるPI3KC2α-MTMx系による内皮バリア形成、恒常性維持機構の解析に必要な内皮特異的MTMxノックアウトマウスの作製及びその表現型解析の進捗が少し遅れている。現在、全身型MTMxノックアウトマウスの作出を終え、その表現型の解析を進めている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下の項目について検討する。 1)PI3K-C2αKO における内皮機能障害に及ぼすMTMx 遺伝子欠損の影響 内皮バリア障害型血管炎疾患モデルを用いて、PI3K-C2αKO で見られた内皮バリア機能障害がMTMx とのダブルKO によるレスキュー効果を検証すると共に、既存薬および新規候補薬の投与効果を検証する。これと平行して、これまで全身型MTMx遺伝子KOマウスで観察された幾つかの表現型について、その機序を詳細に解析する。 2)PI3K-C2α/βダブルノックダウン細胞株を用いた腸管・尿細管上皮の極性形成・安定化におけるPI(3)P 依存的メンブレン・トラフィック調節機構の解析 これまでのC2α全身型KO および内皮特異的CKO マウスで生じる内皮異常の結果から、C2α酵素の発現が最も多い臓器である消化管(小腸・大腸)および尿細管(腎臓)におけるクラスII 型PI3K の機能に着目した。しかし、Villin-Cre マウスを用いた腸管・尿細管上皮特異的C2αCKO マウスは、予想に反し形態的にも機能的にも全く異常が見られなかった(未発表)。この原因として、C2α同様に腸管・尿細管上皮に豊富に発現するC2β酵素による代償作用が考えられる。したがって、腸管・尿細管上皮細胞株においてC2αおよびC2βのダブルノックダウンし、種々の細胞機能変化を詳細に検討する。In vitro でのC2βの代償作用を確認した後、上皮特異的C2αヘテロKO マウスとC2βKO マウス(既に入手済み)を交配してダブルKO マウスを得、肉眼的観察、組織学的解析およびRI 標識トレーサーを用いた上皮吸収機能評価等を行い、上皮におけるクラスII 型PI3K の生理的役割を明らかにする。
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Research Products
(8 results)
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[Presentation] Role of S1P2 in inflammation and fibrosis2015
Author(s)
Yoh Takuwa Juanjuan Zhao, Yasuo, Okamoto, Kazuaki Yoshioka and Noriko Takuwa
Organizer
14 th International Conference on Bioactive Lipids in Cancer, Inflammation, and Related Diseases
Place of Presentation
Sofitel Chain Bridge Hotel(ハンガリー ブタペスト)
Year and Date
2015-07-12 – 2015-07-15
Int'l Joint Research / Invited
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