2014 Fiscal Year Research-status Report
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26460307
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
立山 充博 生理学研究所, 分子生理研究系, 准教授 (30276472)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GPRC / FRET / 電位依存性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、細胞のシグナル伝達において重要な役割を担うGq共役型受容体の膜電位依存性の解明を目的としている。この目的のもと、電気生理学的実験用のセットアップにてGqシグナル活性化を評価するシステムの導入と電位依存性が示唆されているGq共役型受容体のクローニングを行った。まず、Gqシグナル活性化は膜脂質成分であるPIP2に結合するタンパク質を基に開発されたセンサーの蛍光共鳴エネルギー遷移(FRET)効率の計測により評価した。その結果、Gq共役型受容体であるムスカリン型受容体1型を刺激すると、3%程度のFRET効率の減少が認められた。この変化量は、濃度作用解析を行うには非常に小さい値であった。また、クローニングしたαアドレナリン受容体とセロトニン受容体2A型では、作用薬を最大濃度を投与しても有意なFRET変化は認められなかった。以上の結果から、既存のFRETセンサーではGqシグナルの活性化を感度よく検出することが出来ないということが明らかとなった。 一方、我々は、2ポアカリウムチャネルの一種がGqシグナル活性化により電流の増加を示すことを、新たに見出した。上記の各Gq共役型受容体によりチャネル電流画像化することも確認しており、濃度作用関係の解析にも用いることができると考えている。この評価系を用いて、各受容体におけるGqシグナリングの膜電位依存性についての定量的な解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Gqシグナル活性化の評価系をどうするのかという点では当初の計画から変更を余儀なくされたが、新たな実験系はより定量性が高いことが期待されるためおおむね順調な進展であると考えている。また、セロトニン受容体2A型やアドレナリンα受容体1型などのGq共役型受容体をクローニングし、カルシウムイメージングや全反射照明系を用いた実験から基礎的なGq応答性についても検討することができた点は今後の研究に有用であると考えている。 LED光源の導入により、Gqシグナル活性化をFRETセンサーにより定量的に測定するということが困難であることが明らかになったことも、一つの成果と考えている。なお、LED光源を用いて、我々が開発したムスカリン受容体のFRETコンストラクトのFRET効率を計測したところ、作用薬投与によるFRET効率の減少が認められた。このことから、構造変化をレポートするFRETコンストラクトについては、電気生理学的実験との併用により受容体レベルでの膜電位依存性の検討が可能出ることも確認した。濃度作用曲線の作成には長時間の記録が必要となるが、LED光源はON/OFFを制御できるため、褪色の影響を抑えることができることを明確にできた点も今後の研究の進展に重要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
Gqシグナリングの膜電位依存性とは、濃度作用曲線が脱分極時と過分極時に大きく異なるということであり、筋細胞や神経の興奮性により神経伝達物質に対する感受性が変化するということを示唆している。また、電位依存性が受容体に由来するのか、それとも下流に位置するG蛋白質や効果器である酵素に依存するのかについても十分な情報はない。 27年度は、Gqシグナル活性化により電流増加を示すカリウムチャネルの電流記録により各Gq共役型受容体の膜電位依存性について検証を進めることを予定している。具体的には、膜電位を+40 mVと-80 mVに固定して、異なる濃度の作用薬を投与し電流の増加量から濃度作用曲線を作成し、電位によりEC50に差があるかどうかを調べる。 また、受容体自身が電位依存性を有するかどうかを検討するために、受容体のFRETコンストラクトを作成し、作用約依存性のFRET効率変化の有無とその大きさを調べる。作用薬の最大濃度投与でもFRET効率の変化が小さい場合は濃度依存性についての解析が困難となる。そのため、FRET効率の変化が大きくなるように蛍光蛋白質の挿入部位を複数試すことも計画している。
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Causes of Carryover |
全反射照明システムの導入を予定していたが、間接経費との兼ね合いからこのシステムの購入を取りやめ、代わりとしてより安価なLED照明システムを導入した。そのため、物品費が予定より少なくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
GPCRを介するシグナル伝達の効率は、受容体の膜発現密度により影響を受けることが知られている。そこで、受容体と効果器(イオンチャネルやPLC活性評価センサー)の量比と相対距離を固定するために、両者を異なる長さのアミノ酸リンカーで結合して実験を行うことも計画していた。実際に実験を行ったところ、興味深い結果を得ることができた。そこで、この研究の論文投稿と発表に次年度使用額分を充てる予定である。また、電気生理学的実験の比重が増えるため、ガラス電極や試薬の購入にも使用を予定している。
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