2014 Fiscal Year Research-status Report
感染ストレスによる脳内神経炎症機序とプラズマローゲン
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26460320
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片渕 俊彦 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80177401)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プラズマローゲン / ミクログリア / 血液脳関門 / レンチウイルス / shRNA / Akt / BDNF / 水迷路学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、神経炎症モデルにおける、(1)末梢から脳への情報変換インターフェイス機構、(2)神経炎症、および(3)表現型としての学習記憶障害の機序を個体およびグリアや神経細胞の培養系を用いて検討し、さらに、(4)エーテル型グリセロリン脂質であるプラズマローゲン(Pls)による神経炎症の制御と神経変性疾患の治療薬としての可能性を探る。 今年度は、①末梢-脳情報変換機構について、末梢にウイルス感染モデルとなるpoly I:C(1~10 mg/kg)の腹腔内投与を行うと、グリアの活性化とともに血液脳関門が破綻することを色素(エバンスブルー)の脳内への浸潤によって明らかにした(Eur J Neurosci, 2014)。②神経炎症モデルでは、Plsの合成酵素の発現が抑制され、海馬のPls含量が低下していることが明らかになった。アルツハイマー病において脳内のPlsが低下していることが報告されているが、矛盾しない結果が得られた。③マウスの両側海馬へ、Pls合成酵素のmRNA発現を阻害するshRNAを組み込んだレンチウイルスベクターを微量投与すると、学習行動が障害され、その時脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現量が低下していることが明らかになった。④培養系グリア細胞や神経細胞において、Pls投与によりAktが活性化され、その結果p-CREBが増加し、BDNFの発現が増強することが明らかになった。⑤Plsを含む飼料をマウスに6ヶ月与えると、コントロール食群と比較して水迷路学習行動が促進することが明らかになった。この時海馬のAktの活性化およびBDNFの発現が増強していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
目的とした実験はほぼ実行できており、欧文学術誌に1編(Eur J Neurosci)に投稿できた。 特に問題はない。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)末梢-脳情報変換機構、(2)神経炎症と(3)学習障害の解析、および(4)Plsによる改善作用の解析などの項目について、前年度の研究を継続し完了させる。一方で、神経炎症による学習記憶障害、およびPlsによるその改善作用を、本研究者の研究室で確立している、グリアおよび神経細胞の初代培養系を用いて分子生物学的に解析する。 神経細胞、ミクログリア、およびアストロサイトにおける炎症刺激時のPls合成酵素のダウンレギュレーションの機序を、分子生物学的手法によるプロモーター解析などにより明らかにする。また、マウス個体を用いて炎症、老化、および拘束ストレスにおけるPls動態とPls合成酵素やBDNFなどの学習関連遺伝子の発現の変化をそのメカニズムを詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
試薬および理化学器財等の物品費において、当初計画より、価格の割引等で差額が生じた。実験の進展は計画通りである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
おもに物品費と旅費に使用する予定。計画通りに進展していると考える。
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Research Products
(8 results)