2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460322
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
高柳 友紀 自治医科大学, 医学部, 講師 (10418890)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オキシトシン / PrRP / 遊び行動 / 社会的ストレス / 肥満 / 摂食 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼少期に虐待やネグレクト、孤独といった社会的ストレスを経験すると、摂食の異常と肥満が起こりやすいという疫学的な報告がある。しかし、このメカニズムは明らかではない。一方、我々は延髄プロラクチン放出ペプチド(PrRP)産生ニューロンー視床下部オキシトシン産生ニューロン回路が摂食を終了させることを示してきた。また、我々は幼少期のオキシトシンが成熟後の社会行動を維持するのに重要であることを示してきており、幼少期に虐待やネグレクトを経験したヒトで、血中オキシトシン濃度が低下していることが知られている。本研究の目的は、幼少期に社会的ストレスを受けると、このPrRP-オキシトシン神経回路が可塑的に機能低下し、その結果成熟後に摂食量が増大して肥満するという仮説を検証することである。 幼少期の遊び行動は、社会行動や認知機能の発達に重要と言われている。そこで、幼少期の社会的ストレスとして、社会的隔離によって遊ぶことができない群と、隣で他者が遊んでいるのを観察できるが一緒に遊ぶことができない群の検討を行うことにした。まず、遊び行動をしているラットでは、視床下部のオキシトシン産生ニューロンが活性化される様子が認められた。他者の遊び行動を観察しているが一緒に遊ぶことができない個体では、一匹で遊ぶ行動が惹起され、遊び行動をしているラットと同様にオキシトシン産生ニューロンが活性化される様子が認められた。現在、これらの動物の成熟後の行動、摂食量、体重変化の解析を始めている。 また、これまでに我々は、オキシトシン産生ニューロンを部位特異的に破壊して、その機能を探る目的で、オキシトシン遺伝子のプロモーター下にヒトジフテリア毒素受容体遺伝子を組み込んだトランスジェニックラットを作製してきた。これに対してジフテリア毒素を投与し、特異的にオキシトシン産生ニューロンを破壊できるラインを確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
幼少期に遊び行動をすると、視床下部オキシトシン産生ニューロンが活性化されることを明らかにした。また、他者の遊び行動を観察できるが自分は遊べない状況のラットでは、一人遊びが惹起されること、視床下部オキシトシン産生ニューロンが活性化されることを確認した。 さらに、これまでに開発してきたオキシトシン遺伝子のプロモーター下にヒトジフテリア毒素受容体遺伝子を組み込んだトランスジェニックラットに対し、薬剤を投与して特異的にオキシトシン産生ニューロンを破壊できるラインを選定した。 これらは当初の計画通り順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
遊び行動の時に、PrRP産生ニューロンが活性化されるのかを検討する。 幼少期の社会的なストレスにより、成熟後の摂食行動や体重がどう変化するかを観察する。また、この動物のPrRP-オキシトシン神経回路の神経活動と遺伝子発現を検討し、可塑的な機能低下があるのかを検証する。さらに、幼少期の社会的なストレスにより、成熟後の高嗜好性食物の摂食がどう変化するかを観察する。その際のPrRP-オキシトシン神経回路の神経活動、ドーパミン作動性ニューロンの活動、ドーパミンの放出を検討する。この動物に対して、アデノ随伴ウイルスを用いた回復実験、人工受容体 (Designer Receptors Exclusively Activated by Designer Drugs: DREADD) を用いたPrRP-オキシトシン神経回路の賦活化実験を行い、社会的ストレスによる摂食異常や肥満を抑制できるかの検討を行う。
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Research Products
(10 results)