2015 Fiscal Year Research-status Report
新しい血管・リンパ管制御システムに基づく、癌の革新的な医薬基盤の構築
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26460337
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
新藤 優佳 信州大学, 医学系研究科, 研究員 (50507506)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
アドレノメデュリン(AM)は多彩な生理活性を有するペプチド因子である。我々は、血管におけるAMの作用は、主としてAMの受容体活性調節タンパクRAMP2が規定していることを明らかとしてきた。一方、AM、RAMP2は、様々な腫瘍において高発現を認めることが報告されている。これまでの検討から、RAMP2ノックアウトマウスに対して腫瘍の皮下移植実験を行うと、腫瘍内血管新生が抑制され、局所での腫瘍の増大も抑えられ、さらに腫瘍が自壊している様子も観察された。 本年度の研究では、成体において任意の時期にRAMP2遺伝子を欠損できる、誘導型の血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス (DI-E-RAMP2-/-)を用いて、AM-RAMP2系のがん転移における意義について検討した。メラノーマ細胞(B16BL6)を足底部に移植するとDI-E-RAMP2-/-では自然肺転移率が上昇するという結果が得られた。DI-E-RAMP2-/-では、RAMP2遺伝子欠損の誘導後、肺の血管において、VE-カドヘリンの発現低下と、内皮細胞が基底膜から血管管腔に向けて突出、剥離するなどの血管の構造異常が観察された。そこで、DI-E-RAMP2-/-の血管内皮細胞を分離培養したところ、細胞膜直下のアクチンリングの形成が減弱し、ストレスファイバーの形成が増強していることが確認された。低分子量GタンパクRhoファミリーの活性を検討したところ、DI-E-RAMP2-/-の内皮細胞ではRac1の活性低下と、RhoAの活性亢進が認められた。Rac1/RhoAバランスの異常が、アクチン重合状態に変化を生じ、内皮細胞の細胞骨格の異常と血管透過性亢進をもたらしていることが示唆された。 以上の結果から、血管内皮細胞のRAMP2欠損により、血管構造の不安定化、透過性亢進が生じ、がんの遠隔臓器への転移を促進させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス作出に成功し、これを用いることで、マウスにおける移植腫瘍細胞の増殖、血管新生、転移実験等が予定通り遂行され、次年度につながる研究成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究成果を踏まえ、誘導型血管内皮細胞特異的RAMP2ノックアウトマウス(DI-E-RAMP2-/-)を応用して、種々の腫瘍細胞の移植実験を行い、RAMP2遺伝子欠損誘導後より原発巣に起こる変化を、遺伝子、タンパクの発現変化や、病理学的な変化を経時的に観察し、癌細胞が血管内浸潤するプロセスの中で、転移促進に働いている因子を明らかとする。さらに転移予定先に遠隔臓器については、転移前土壌形成因子や、腫瘍細胞遊走促進因子の関与を明らかとし、癌転移抑制のための新しい治療戦略の足掛かりとする計画である。
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Research Products
(10 results)