2015 Fiscal Year Research-status Report
静止期制御因子を指標とした造血幹細胞不均一性の解明
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26460361
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
上野 将也 金沢大学, がん進展制御研究所, 助教 (20334766)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 白血病幹細胞の分子基盤解析 / 造血幹細胞の分子基盤解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
最近の研究により、造血幹細胞は極めて多様な生物活性を持ったヘテロな集団であることが判明した。生体ではこの不均一性を維持することで、造血システムを長期間維持し、様々なストレスに対応していると考えられる。本研究では、分裂活性や細胞周期制御に極めて重要なmTORとFoxoに着目し、造血幹細胞の不均一性の実体とその制御機構の解明にアプローチする。 平成27年度は主に造血幹細胞の不均一性の制御に関わる候補遺伝子の探索を行った。造血幹細胞ではFoxoが活性化しているが、このFoxoの活性はAktにより負に制御されており、さらにAktはmTOR複合体2(mTORC2)に正に制御されている。従ってmTORC2を阻害することでFoxoを間接的に活性化できることが想定されるが、Rictor欠損造血幹細胞の未分化性の維持や分裂活性などは野生型と同等であり、mTORC2に加えて、mTORC1も造血幹細胞の不均一性に寄与していることが考えられた。そこでmTORC1の制御因子であるRhebとRictorのダブル・ノックアウトマウスを作出した。 一方、白血病幹細胞は正常な幹細胞と共通する分子機構を利用することで、宿主内で有利に生存していることが報告されている。また、がん細胞はヘテロな集団を形成することで、抗がん剤に対する抵抗性を付与していることが想定されている。興味深いことに、Rictor欠損白血病細胞株はイマチニブに対する感受性が亢進しており、イマチニブ耐性を獲得できなかった。この耐性を制御する遺伝子を同定する目的で、shRNAライブラリーを用いたスクリーニングを実施し、複数の遺伝子候補を同定した。また、マイクロアレイを実施し、mTORC2に発現が制御されている遺伝子を複数同定した。これらの遺伝子はFoxoにより発現制御を受けている可能性があるため、Dox誘導型Cas9システムを構築し、Foxo1, 3, 4を欠損する白血病細胞株を樹立した。加えて、Foxo1, 3遺伝子のコンディショナルノックアウトマウスを作出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、Rictor欠損細胞株を樹立し、遺伝子発現変動を網羅的に解析したことで、mTORC2により制御を受ける複数の候補遺伝子を効率よく同定することができた。さらにshRNAライブラリーを用いた網羅的スクリーニングを実施し、複数の遺伝子候補を同定できた。また、造血幹細胞におけるmTORキナーゼ複合体とFoxoの機能解析に用いるRaptor、Rictor、Rheb, Foxo1、Foxo3、Foxo4、あるいはTsc1遺伝子のコンディショナル欠損マウスの作出・維持が順調に進んだ。加えて、移植実験などに用いるFoxo欠損ヒト白血病細胞株をCRISPR/Cas9システムを用いて樹立できた。これらの成果から、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに同定した造血幹細胞の不均一性の制御に関わる候補遺伝子について、shRNAを用いた遺伝子発現のノックダウン、CRISPR/Cas9システムによる遺伝子ノックアウト、あるいは強制発現を実施し、細胞増殖、細胞周期、分化および細胞死に対する影響を解析し、個々の候補遺伝子の機能を明らかにする。また、作出したRaptor、Rictor、Rheb, Foxo1、Foxo3、Foxo4、あるいはTsc1のコンディショナル・ノックアウトマウスや樹立したヒト細胞株を利用して、造血幹細胞や白血病幹細胞でmTORキナーゼ複合体あるいはFoxoの機能欠損または亢進を誘導し、各々の候補遺伝子の発現様式やその機能を詳細に解析することで、造血幹細胞の不均一性に関与する分子機構を明らかにする。
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