2014 Fiscal Year Research-status Report
Wntとその受容体の細胞内トラフィック制御機構の解析
Project/Area Number |
26460365
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山本 英樹 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20372691)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Wntシグナル / Wnt / 受容体 / 翻訳後修飾 / 細胞内トラフィック |
Outline of Annual Research Achievements |
分泌糖蛋白質のWntは上皮細胞の極性化に重要な機能を果たしていることは明らかになりつつあるが、Wntが極性化した上皮細胞において、頂端部あるいは側底部に分泌されるのかは不明である。これまでに蛋白質の翻訳後修飾が細胞内の局在や小胞輸送に関連することが示唆されている。そこで、本研究ではWntの糖鎖と脂質修飾の実体を明らかにすると共に、Wntとその受容体の細胞内トラフィックによるWntシグナル活性化の制御機構を明らかにすることを目的としている。これまでに、私共は質量分析法によってWnt5aの翻訳後修飾について解析し、244番のセリン残基にパルミトレイン酸が付加され、114番と326番のアスパラギン残基(N)に高マンノース型、312番のNに混成型糖鎖が付加されること、極性化した上皮細胞においてWnt5aはクラスリンとadaptor protein-1を介して側底部へ分泌されることを明らかにしている。今年度、私共はMDCK細胞のシストにおける内腔形成にWnt5aシグナルが関連することを見出し、Wnt5aが側底側に分泌される生理的役割を解析した。その結果、Wnt5aの発現抑制による内腔形成の遅延に対して頂端側に分泌されるWnt5a変異体の発現ではレスキューできないが、側底側に分泌される野生型のWnt5aによってレスキューされた。また、極性化されたMDCK細胞においてWnt5a受容体のFz2とRor2が側底側に局在することを見出し、側底側においてWnt5aシグナルが活性化されるとFAKとPaxillinのリン酸化やRac1の活性化を介して細胞-ECM接着が促進されることにより、MDCK細胞のシストにおける内腔形成が促進されることを明らかにした。 これらの研究成果は分泌蛋白質における翻訳後修飾の生理的意義や極性分泌の制御機構を明らかにし、細胞内輸送の研究分野の進展に貢献したと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにWnt蛋白質は細胞外マトリックスに結合する傾向が強く、生理活性を有するWntとして単離、精製することが困難であったため、Wnt蛋白質の翻訳後修飾の実体やその生理機能の詳細は明らかにされていなかった。本研究において、大阪大学蛋白質研究所の高尾敏文教授との共同研究により、Nano-liquid chromatography (LC)/electrospray ionization (ESI)-mass spectrometry (MS)/MSを用いてWnt5aに付加される脂質や糖鎖構造を明らかにした。さらに、上皮細胞におけるWntとそれらの受容体の極性輸送について解析し、Wnt5aとその受容体のFz2とRor2の側底側への極性輸送がMDCK細胞のシストにおける内腔形成に関連することを明らかにした。これらの研究成果をJ. Cell Sci., 128, 1051-1063, 2015に発表した。したがって、当初の計画通り研究が進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでにβ-カテニン非依存性経路を活性化するWnt5bの翻訳後修飾を質量分析法により解析した結果、Wnt5bには2箇所のアスパラギン残基に高マンノース型と1箇所のアスパラギン残基には混成型の糖鎖が付加され、Wnt3aやWnt5aと同様にパルミトレイン酸が付加されていることを見出している。また、Wnt1の精製法の確立や翻訳後修飾と細胞外分泌の関連の解析を進めている。そこで、Wntの翻訳後修飾による細胞外分泌の制御機構や受容体との結合に違いがあるかを系統的に解析し、糖鎖修飾や脂質修飾によるWntの機能発現制御を明らかにする。さらに、Wnt1やWnt3a依存性のβ-カテニン経路の活性化に必要なLRP6受容体の極性輸送の制御機構とそれらの生理的意義を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
2014年10月に京都における生化学で学会発表を行ったため、旅費が不要であった。また、研究成果をJournal of Cell Scienceに投稿し、掲載されたため、別刷料に加えて投稿料や掲載料が不要であった。今年度からWnt受容体のLRP6の細胞内輸送と生理的意義の解析を行うために大量の消耗品が必要であり、消耗品費として使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主に下記の1)から3)の消耗品の購入に使用する予定である。1)哺乳動物細胞を培養する際に使用する大量の牛胎児血清やメディウム、培養用器具。2)蛋白質の発現やノックダウンをする際に使用する高額の分子生物学用試薬やトランスフェクション用試薬。3)Wnt蛋白質の機能解析をするために使用する抗体、protein A sepharose(免疫沈降用)、ならびにWnt蛋白質を精製する際に必要な各種担体Wntの精製に必要なカラムや担体、質量分析用試薬、Wntの極性分泌を解析するためのトランスウェル。 また、研究発表のために旅費として使用する。
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Research Products
(7 results)
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[Journal Article] Basolateral secretion of Wnt5a in polarized epithelial cells is required for apical lumen formation2015
Author(s)
Yamamoto, H., Awada, C., Matsumoto, S., Kaneiwa, T., Sugimoto, T., Takao, T., and Kikuchi, A.
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Journal Title
J. Cell Sci.
Volume: 128
Pages: 1051-1063
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Wnt5a promotes cancer cell invasion and proliferation by receptor-mediated endocytosis-dependent and -independent mechanisms, respectively2015
Author(s)
Shojima, K., Sato, A., Hanaki, H., Tsujimoto, I., Nakamura, M., Hattori, K., Sato, Y., Dohi, K., Hirata, M., Yamamoto, H., and Kikuchi, A.
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Journal Title
Sci. Rep.
Volume: 5
Pages: 8042
DOI
Peer Reviewed
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