2016 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病やがんの発症・進行におけるNedd4-IRS複合体の乖離/形成の意義
Project/Area Number |
26460369
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
福嶋 俊明 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (70543552)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | インスリン / インスリン様成長因子 / インスリン受容体基質 / ユビキチン / がん / 糖尿病 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、これまでに、インスリン/IGFシグナルを仲介するIRS-2にユビキチンリガーゼNedd4が結合すると、IRS-2がモノユビキチン化され、インスリン/IGFに応答したIRS-2のチロシンリン酸化が促進、インスリン/IGF活性が増強することを見出してきた。本研究では、インスリン/IGF活性の異常が関与して起こる糖尿病やがんに着目し、これらの発症・進行におけるNedd4-IRS-2複合体の役割を明らかにすることを目的にしている。 平成26-27年度の解析では、前立腺がん細胞ではNedd4-IRS-2複合体が過剰に形成されており、これによりIGFシグナルが増強、細胞の過増殖の一因となることが示された。一方、肝細胞が過剰の糖にさらされるとNedd4-IRS-2複合体の形成が阻害されてインスリン感受性が低下、これが糖尿病発症の一因となる可能性が示された。さらに、IRS-2に相互作用する脱ユビキチン化酵素としてUbiquitin specific protease (USP) 15を同定したので、平成28年度はこの機能解析を進めた。SILAC法を用いた定量的質量分析により、USP15はユビキチン化していないIRS-2よりもユビキチン化されたIRS-2により多く結合することがわかった。USP15の発現を抑制すると、Nedd4によって誘導されるIRS-2のユビキチン化が促進、IGF-I 刺激に応答したIRS-2のチロシンリン酸化が増強し、IRS-2の下流でリン酸化を受けて活性化するセリンスレオニンキナーゼであるAktやErkのリン酸化も増強した。他の結果も併せ、USP15はNedd4がIRS-2に付加したユビキチンを除去し、インスリン/IGFに応答したIRS-2のチロシンリン酸化を抑制、インスリン/IGFの生理活性を減弱させる役割を果たすと結論し、成果を学術誌で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画立案時は予想していなかったが、昨年度までの研究の過程でユビキチン化したIRS-2に脱ユビキチン化酵素USP15が相互作用することを発見したので、本年度はその機能解析について精力的にすすめた。研究実績の概要で記したように、USP15がユビキチン化IRS-2に結合して脱ユビキチン化することにより、ユビキチンリガーゼNedd4と拮抗して働き、インスリン/IGFのシグナルや生理活性を減弱させる役割を果たすことを明らかにし、この研究成果を学術誌で発表することができた。一方、「今後の研究の推進方策」で記すように、Nedd4-IRS-2複合体形成機構の解明や、Nedd4-IRS-2複合体形成を促進/阻害する低分子化合物の開発については、予定よりも研究が遅れている。従って、研究全体としては「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
Nedd4-IRS-2複合体形成機構を調べるため、Nedd4-IRS-2複合体の形成が変動する際のNedd4やIRS-2の分子修飾/結合タンパク質の変動をLC-MS/MSで解析し、これをもとに複合体形成機構の解析を進めることとする。 また、Nedd4-IRS-2複合体形成を促進/阻害する低分子化合物をスクリーニングする系として、Nedd4 とIRS との結合量をAlphaテクノロジーを用いて検出する実験系の構築に着手しており、予備的な検討を行った結果、相互作用の検出に成功している。今後、低分子化合物をスクリーニングするツールとして利用するため、ハイスループットな実験系で相互作用が検出できるか確かめた後、スクリーニングに着手する。 最終的には、明らかとしたNedd4-IRS-2複合体形成機構の知見や、複合体の機能に影響を与える物質を利用し、Nedd4-IRS-2複合体の形成/乖離ががんや糖尿病の発症・進行に寄与することをモデル細胞等で証明する。
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Causes of Carryover |
昨年度までの研究の過程でユビキチン化したIRS-2に脱ユビキチン化酵素USP15が相互作用することを発見したので、本年度はその機能解析について精力的にすすめた。研究実績の概要で記したように、USP15がユビキチン化IRS-2に結合して脱ユビキチン化することにより、ユビキチンリガーゼNedd4と拮抗して働き、インスリン/IGFのシグナルや生理活性を減弱させる役割を果たすことを明らかにし、この研究成果を学術誌で発表することができた。この論文発表の準備に時間を要したため、Nedd4-IRS-2複合体形成機構の解明や、Nedd4-IRS-2複合体形成を促進/阻害する低分子化合物の開発については、予定していた実験が一部行えなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Nedd4-IRS-2複合体形成機構を調べるため、Nedd4-IRS-2複合体の形成が変動する際のNedd4やIRS-2の分子修飾/結合タンパク質の変動をLC-MS/MSで解析し、これをもとに複合体形成機構の解析を進めることとする。 また、Nedd4-IRS-2複合体形成を促進/阻害する低分子化合物をスクリーニングする系として、Nedd4 とIRS との結合量をAlphaテクノロジーを用いて検出する実験系の構築に着手しており、予備的な検討を行った結果、相互作用の検出に成功している。今後、低分子化合物をスクリーニングするツールとして利用するため、ハイスループットな実験系で相互作用が検出できるか確かめた後、スクリーニングに着手する。
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Remarks |
*と同じ内容は、東京大学農学生命科学研究科HP (http://www.a.u-tokyo.ac.jp/topics/2015/20150420-1.html)、および、広島大学HP (http://www.horpshima-u.ac.jp/news/show/id/22883)からも発信された。
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[Journal Article] Reduced SHARPIN and LUBAC Formation May Contribute to CCl4-or Acetaminophen-Induced Liver Cirrhosis in Mice2017
Author(s)
Takeshi Yamamotoya, Yusuke Nakatsu, Yasuka Matsunaga, Toshiaki Fukushima, Hiroki Yamazaki, Sunao Kaneko, Midori Fujishiro, Takako Kikuchi, Akifumi Kushiyama, Fuminori Tokunaga, Tomoichiro Asano, Hideyuki Sakoda
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Journal Title
International Journal of Molecular Sciences
Volume: 18
Pages: 326
DOI
Peer Reviewed
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[Journal Article] USP15 attenuates IGF-I signaling by antagonizing Nedd4-induced IRS-2 ubiquitination2017
Author(s)
Toshiaki Fukushima, Hidehito Yoshihara, Haruka Furuta, Fumihiko Hakuno, Shun-Ichiro Iemura, Tohru Natsume, Yusuke Nakatsu, Hideaki Kamata, Tomoichiro Asano, Masayuki Komada, Shin-Ichiro Takahashi
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Journal Title
Biochemical and Biophysical Research Communications
Volume: 484
Pages: 522-528
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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