2015 Fiscal Year Research-status Report
小胞輸送とアクチン細胞骨格再編成から観る脳の高次構造・機能構築のダイナミズム
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26460370
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
坂根 亜由子 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部, 助教 (60509777)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 脳の高次構造・機能 / 小胞輸送 / アクチン細胞骨格の再編成 / Rab13-JRAB系 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳の高次構造の構築および高次機能の獲得におけるシナプス形成・成熟過程では様々な分子群の機能部位への小胞輸送とそれに伴ったアクチン細胞骨格の再編成が非常に重要な役割を担っている。本研究では、脳の高次構造の構築から高次脳機能の獲得に至るまでのダイナミズムをRab13に依存したJRABの構造変化とそれに伴う蛋白質-蛋白質間の相互作用の変化が制御する小胞輸送とアクチン細胞骨格再編成という観点から明らかにすることを試みる。 これまでにバイオインフォマティクスと生化学を組み合わせた手法によってJRABのRab13依存的な構造変化を証明していたが、本年度は、JRABのFRETプローブを用いて生細胞におけるJRABの構造の時空間変化を証明することができた。さらに、神経細胞とのアナロジーを有する上皮細胞にJRABの構造変異体を発現させ、創傷治癒アッセイを行って得られたライブイメージングの動画をもとにコンピュータサイエンスの手法により各変異体のライブイメージング像の特徴を抽出して定量化することに成功した。また、各々の細胞集団においてバイオメカニクスの手法を用いた力学的解析を行った。それらの結果としてJRABの構造変化が細胞集団局所での方向性や速度、さらには細胞集団の先頭で生み出される牽引力を調節しており、JRABの構造の可塑性がアクチン細胞骨格の時空間制御につながり、効率の良い集団的細胞運動を可能にする秩序と法則性を生み出すことを証明することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、JRABのN末端側とC末端側の結合・非結合を感知することで、open formとclosed form間の構造変化を捉えることができるJRABのFRETプローブの作製に成功した。そのFRETプローブを用いて生細胞におけるJRABの構造の時空間変化を証明することができた。さらに、神経細胞とのアナロジーを有する上皮細胞にJRABがopen formやclosed formに固定された変異体を発現させ、創傷治癒アッセイを行って得られたライブイメージングの動画を理化学研究所の横田秀夫博士のグループとの共同研究でコンピュータサイエンスの手法により解析し、さらに、大阪大学の出口真次教授との共同研究でバイオメカニクスの手法を用いて各々の細胞集団の力学的解析を行った結果、JRABの構造の可塑性がアクチン細胞骨格の時空間制御につながり、効率の良い集団的細胞運動を可能にする秩序と法則性を生み出していることを証明できた。来年度は、上皮細胞で得られた成果をもとに神経細胞での解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、上記のように神経細胞とのアナロジーを有する上皮細胞を用いて細胞機能におけるRab13に依存したJRABの構造変化の役割やその重要性を明らかにすることができたが、今後は、それらの研究成果を本来の目的である神経細胞に応用した解析を進めていく。現在、CRISPR-Cas9システムを用いたゲノム編集によってJRABの構造変異体(JRABΔCC、JRABΔCT)を発現したマウスを作製中である。本マウスが完成すれば、脳の高次構造・機能の構築におけるJRABの構造変化の重要性を明らかにすることができると考えている。また、どのようなシグナルがJRABの構造変化を引き起こすのかを明らかにするために、これまでの解析で作製に成功しているJRABの構造変化を感知できるFRETプローブを用いたスクリーニング系を確立し、上流のシグナルの同定につなげたいと考えている。
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Causes of Carryover |
共同研究において結果の如何によって異なった追加実験を必要とする可能性があったため、その試薬購入を待っていたが、結果が出るのが遅れ、その費用が残額として持ち越された。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
その後、3月末に得られた共同研究の成果に従って、4月中に行う追加実験で全額使用する予定である。
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Research Products
(1 results)