2014 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア内チロシンキナーゼc-Src調節とその生物学的意義に関する研究
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26460372
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
本間 好 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (60192324)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活性酸素 / ミトコンドリア / シグナル伝達 / チロシンキナーゼ / プロテオーム / B細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミトコンドリアは細胞エネルギー生成の大半を担う細胞小器官であり、酸化的リン酸化によるATP合成を行う一方、酸素呼吸に伴って生じる活性酸素種(ROS)や他の代謝生成物の産生し、さらには細胞死因子の放出などを介してさまざまな細胞制御を行っている。本研究では、エネルギー産生効率や活性酸素生成に直接影響を与えるミトコンドリア内c-Srcの調節機構とその意義を明らかにすることを目的とする。 以下の2テーマで研究を推進した。当該年度の研究成果を次に示す。テーマ①ミトコンドリア内c-Src活性化メカニズムを明らかにするために、さまざまな条件で培養した細胞よりミトコンドリア分画を調製し、それらより得たc-Src分子複合体を種々の生化学的方法で解析した。その結果、ミトコンドリア内のc-Src活性化機構は細胞質や形質膜における機構とは全く異なること、c-Src活性化に必要な分子が存在することなどが明らかになった。また、細胞質ゾルのシグナル系との連動メカニズムが存在することが判明した。テーマ②c-Src活性低下により発生した酸化ストレスが実際に病態を惹き起こすプロセスを解明するために、c-Srcリン酸化不可変異体(SDHAY215F)をB細胞特異的に発現させた独自のトランスジェニックマウスを作製した。この個体の脾臓細胞では、有意レベルの活性酸素が恒常的に産生されていることを確認した。また同個体においては、抗原刺激に伴う抗体産生能やB細胞活性化能が抑制されており、B細胞受容体のシグナル伝達系が減弱していることを見いだした。B細胞シグナル伝達系の主な分子の発現レベルには顕著な変化は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は大きな障害もなく順調に進展していて、ほぼ計画通りの成果をあげている。テーマ①については、c-Srcキナーゼ活性を測定する段階をほぼ終了し、プロテオーム解析ができる段階に移っている。さまざまなストレス刺激の中で、細胞あたりのミトコンドリア数に影響を与える刺激があることを確認できたのは有意義であった。テーマ②については、計画を越えた研究進行の状況で、B細胞受容体のシグナル伝達系に異常があることが明らかになった。今のところB細胞の分化発達異常を観察することはできていない。
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Strategy for Future Research Activity |
テーマ① 1)c-Src複合体のプロテオーム解析:ミトコンドリアに限局して効率よくFLAG-c-Srcを発現する技術を確立することに成功したので、抗FLAG抗体を用いた免疫沈降法によりc-Src複合体を容易に回収することができ、効率よく解析することができる。2)c-Src活性化の再構成:ミトコンドリア内c-Src活性化に直接関与する分子を同定し、それぞれのリコンビナントタンパク質をin vitroで構成することによりc-Src活性が再現できるかどうかを試みる。これにより、ミトコンドリア特異的なc-Src活性調節機構が存在することを証明する。テーマ② B細胞受容体シグナル伝達系の解析:上記トランスジェニックマウスの脾臓および腹腔洗浄液よりB細胞分画を得る。各種B細胞表面マーカーの発現をFACS解析することにより、抗体産生低下に密接に関連するB細胞レパトアの変化を検出する。さらに、B細胞受容体のシグナル伝達機能について、刺激に伴う受容体の自己リン酸化、SykおよびBLNKなどのリン酸化、PLCγ2のリン酸化、細胞内カルシウムイオン濃度上昇などを指標に評価する。テーマ①+② 考察:以上の研究結果を総合して、ミトコンドリア内c-Src活性の制御メカニズムを考察する。特に、病態モデルにおい てc-Srcの活性制御機構が変化するのかどうかを明らかにする。個体レベルの研究から、活性酸素や酸化ストレスがどのようなメカニズムでB細胞レパトア異常を生み、そして抗体産生系を抑制するのかを成長・老化の時間軸で考察する。
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Causes of Carryover |
予定していた成果発表(主に外国旅費)を実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
計画の通り成果発表を行う。余剰分については物品費に充てる。
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