2015 Fiscal Year Research-status Report
ポリコーム群リクルートメント後の遺伝子発現制御機構の解明
Project/Area Number |
26460379
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
磯野 協一 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (90323435)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 発現制御 / ヒストン修飾 / ポリコーム |
Outline of Annual Research Achievements |
ポリコーム群はほとんどの分化制御遺伝子の発現を抑制状態に固定することで、発生・分化や幹細胞の多様性に貢献している。概してポリコーム群は、2大複合体PRC2とPRC1を形成し、それらが協調的に働くと信じられている。しかしながら、その分子機構はまだ十分に理解されていない。本研究において、我々はPRC1成分のCbx2がもつAT-hookモチーフに注目した。AT-hook構造を破壊する点変異をもつマウスを作製したところ、そのマウスはポリコーム群遺伝子欠損の象徴であるホメオティック変異という表現型を示した。この結果はAT-hookがポリコーム群による抑制機能に必要であることを示唆した。現在、Cbx2 AT-hookの遺伝子抑制における役割とその生理学的意義を調査している。
マウス胚を使った発現解析およびChIP解析からCbx2 AT-hook変異型ではホメオティック遺伝子の脱抑制を確認したが、当該領域での他PRC1成分の局在に大きな差違は見られなかった。これは遺伝子抑制がPRC1局在だけでは説明できないことを示唆している。その詳細と分化への意義を明らかにするために、より良い実験材料であるES細胞を変異マウス胚から樹立した。しかしながら、AT-hook変異ES細胞の遺伝子発現プロファイルは野性型とほぼ同じであった。この結果は未分化状態のES細胞ではCbx2は機能せず、他のCbxファミリーが代替しているという報告に一致する。数年前、我々は外来性Ring1b-Cbx2融合遺伝子の発現がRing1b欠損ES細胞を機能補完することを報告した。このシステムを利用しようと考えたが、Ring1b-Cbx2 AT-hook変異型の安定した発現を得ることができなかった。別法として、Cbxファミリー欠損ES細胞を作製し、そこに野性型Cbx2遺伝子あるいはAT-hook変異型遺伝子を戻した。パイロット実験ではあるが、導入した両遺伝子産物はHox遺伝子座上に局在することを確認した。今後、これらES細胞を使った解析によりAT-hookの役割を明らかにしていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
AT-hook変異マウスで分化異常の表現型が現れているものの、その分子メカニズムを明らかにするには細胞レベルの解析に落とし込むのが良策と考える。ES細胞の多能性や分化能力、様々な実験への汎用性、そして公表されているデータ量の抱負さを考えれば、AT-hookの分子的役割を調査するには、多少の苦労はあったとしてもES細胞が最適と考えた。本年度は、解析に適したES細胞の作製に費やされた。試行錯誤の結果として、その努力が報われたと思っている。この成果は本研究の飛躍的進歩を約束するものと信じている。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したES細胞系を使って発現解析やポリコーム群やヒストン修飾の変化を調査する。これらによりAT-hookの役割に一定の結論をだす。他方、我々のin vitro実験はAT-hookがRNAに結合することを示している。この結合性は遺伝子抑制の重要ポイントであると考えている。RNA結合能からアプローチとしてAT-hookに結合するRNAを同定したいと考えている。
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Research Products
(2 results)