2014 Fiscal Year Research-status Report
ヒストンメチル化酵素PR-set7の関わる細胞機能と発癌の解析
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26460382
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| Research Institution | National Hospital Organization, Kyushu Cancer Center |
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Principal Investigator |
小田 尚伸 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, その他 (30295133)
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| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中別府 雄作 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (30180350)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | ヒストンメチル化 / PR-Set7 / 遺伝子改変マウス / 肝臓癌 / 癌幹細胞 / 肝幹細胞 / 肝発生 / 細胞死 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
ヒストンメチル化酵素PR-Set7は哺乳類においてヒストンH4リジン20のモノメチル化を行う唯一の酵素である。ヒストンH4リジン20のメチル化はDNA複製、DNA損傷応答、分裂期染色体凝縮といった種々の細胞機能に重要な役割を果たしている。マウスやショウジョウバエの遺伝子破壊による実験結果から、細胞レベルではPR-Set7の欠失は細胞周期の停止と細胞死を引き起こし、個体は致死となることが示されている。
今回の研究では肝臓においてヒストンメチル化酵素PR-Set7を特異的に欠失させて、その表現型の解析を行った。まずCre-loxシステムを用いて胎児期のマウス肝においてAFPプロモーター下にPR-Set7を遺伝子破壊した結果、マウスは胎生致死であり、胎生18.5日目で著明な貧血、肝体積の極端な縮小を認めた。対照的にアルブミンプロモーターで肝特異的にPR-Set7を欠損させた際には、マウスは出生し肝臓の一部に壊死が認められたのみであった。壊死はPR-Set7が欠失している状況で肝細胞の増殖が引き金となり生じていると推定された。これを確認する目的で部分的肝切除を行い、残存肝細胞による再生増殖を誘発する実験を行った。再生領域においてPR-Set7欠失細胞は増殖後に死に至り、慢性炎症と壊死領域の拡大を引き起こした。興味深いことに肝部分切除を施行したすべてのPR-Set7欠失マウスにおいて生後240日から300日の間に肝臓癌が発生した。また生じた肝細胞癌は非常に浸透率が高く、腫瘍の多様性が少ないと考えられた。この腫瘍細胞集団は自己複製能を有し、免疫欠損マウスに移植した際に腫瘍を引き起こす能力をもつ癌幹細胞の特性を有していた。今回樹立したマウス発癌モデルは肝癌幹細胞の解析を行っていく上で有用な情報を与えると期待される。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
PR-Set7の肝特異的欠失により発生する癌の特性を明らかにすることができた。今回得られた結果の一部をEMBO Journalに論文として発表することができた。
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| Strategy for Future Research Activity |
一連の実験結果はヒトにおける肝癌発生をある程度反映していると考えられ、これは今後肝癌モデルとして有用な情報を与える可能性がある。今回の肝細胞癌は非常に浸透率が高く驚くほど腫瘍の多様性が少ない。注目されることは、腫瘍細胞の集団が自己複製能を有するとともに免疫欠損マウスに移植した際に腫瘍全体を再構成しうる癌幹細胞を含んでいることである。これらの細胞の表現型と機能についての特徴は明らかにされたが、それを規定する遺伝的あるいはエピジェネティックな変化について今後解析を進めていく予定である。
今後このマウスに生じた肝細胞癌の遺伝子変異やエピジェネティック異常を解析することにより癌幹細胞特異的に異常を来している癌遺伝子や癌抑制遺伝子が判明する可能性がある。さらにこの腫瘍モデルにおける癌幹細胞の高い浸透率は、増殖の制御や転移を引き起すドライバーなどの生物学的な特徴を解析していく上でも有用と考えられる。
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| Causes of Carryover |
①マウス関連の実験費用の一部を共同研究者が負担したため
②学会出張予定を次年度に変更したため
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験試薬の購入及び学会出張に充当する。
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Research Products
(1 results)
