2014 Fiscal Year Research-status Report
がん細胞と間質細胞との相互作用ががんの浸潤・転移を制御する新たな分子機構
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26460389
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 細胞接着 / シグナル伝達 / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
がん細胞(前立腺がん細胞株LNCaP細胞)が間質細胞(前立腺ストローマ細胞)と直接接触することで有意に発現量が変化する分子を、DNAマイクロアレイを用いてゲノムワイドに解析し、細胞膜表面に存在する3分子を同定した。その内の1つ(仮称Mol-1)に主に着目して解析を行った。その結果、Mol-1は4回膜貫通型の細胞表面分子であり、細胞接着能を有する可能性が示唆された。Mol-1の機能解析を行うため、Mol-1を過剰発現させたLNCaP細胞株を作製した。まず、細胞運動能について、ボイデンチャンバーアッセイ法で解析したところ、この細胞株(複数)の細胞運動は有意に上昇した。次に、Mol-1による細胞運動促進のメカニズムを解明するため、Mol-1に結合する分子を探索した。方法としては、Mol-1の細胞内ドメインを精製し、ビーズに固相化した後、カラムに充填した。このカラムにLNCaP細胞の抽出液を流し、結合したタンパク質をSDS-電気泳動で分離した。コントロールと比較して有意に検出された8つのバンドについて質量分析を行い、Mol-1へ結合するタンパク質の一つとしてMol-1-BP(仮称)を同定した。 さらに、Mol-1による細胞運動促進が、Mol-1-BPを介しているかどうか調べるために、Mol-1-BPをノックダウンした細胞を用いてボイデンチャンバーアッセイを行った。その結果、Mol-1の過剰発現による細胞運動の上昇が、Mol-1-BPのノックダウンにより抑制された。このことより、Mol-1→Mol-1-BPのシグナル伝達系により、LNCaP細胞の細胞運動が正に制御されていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がんの浸潤・転移に関連する細胞運動を制御する分子として新たにMol-1(仮称)を見出せたこと、さらに、その結合分子を同定できたことから、本研究の実施については順調に進行している。また、これらの分子を軸としたシグナル伝達の解析にも取り組むことができている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度はin vitro実験を中心として新規分子の探索を行ってきた。その探索により、3つの分子に焦点を当て、その内の一1つ(仮称Mol-1)については機能解析が進行しているとこである。今後は、Mol-1の生体内でのがんの浸潤・転移に関わる役割を検討するため、Mol-1過剰発現LNCaP細胞をヌードマウスなどに移植し、その浸潤・転移能について解析を行う。また、Mol-1が細胞運動を亢進させる詳細なシグナル伝達系についても解明していく。 一方、残りの2分子についても解析を始めている。その内の1つは、過剰発現すると細胞増殖能が上昇する可能性があり、この可能性について実証していく予定である。
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Causes of Carryover |
複数回の実験実施を予定していた解析が順調に進み、実験実施回数を減らすことができたから。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はこの金額を、より高額の費用がかかると予想されるin vivo実験を充実させるために使用することを計画している。
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