2015 Fiscal Year Research-status Report
BRCA1を介した高次クロマチン構造に特異的なDNA損傷修復の解析
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26460402
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Research Institution | St. Marianna University School of Medicine |
Principal Investigator |
呉 文文 聖マリアンナ医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10434408)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | BARD1 / BRCA1 / DNA repair / HP1 / CtIP / BACH1 / RAP80 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度、ヘテロクロマチン蛋白質HP1γを介して結合したBRCA1-BARD1がBRCA1-A,-B及び-C複合体のDNA損傷部位への集積との関与について検討した。BRCA1-A複合体は従来から知られているRNF8/RNF168による連続的なユビキチン化DNA損傷応答によってリクルートされるが、BRCA1-B及び-C複合体はRNF8/RNF168ユビキチン化DNA損傷応答径路に依存せず、HP1γを介したBARD1とヘテロクロマチン領域のヒストンの結合に依存し、ヘテロクロマチン領域の二重鎖切断(DSB)の相同組換え修復に特化した役割を果たしていることを明らかにした。 siRNAを用いてレーザーマイクロ照射誘発したDSB局所に起こるユビキチン化DNA損傷応答を阻断して、ABRA1-RAP80の集積を阻害した際、BRCA1-B及び-C複合体はDSB局所にリクルートされ、相同組換え修復に必要なRad51の集積も認められた。BRCA1-B及び-C複合体のDSB局所集積はユビキチン化DNA損傷応答経路に依存しないことを明らかにした。一方で、HP1γと結合しないBARD1変異細胞を用いた実験では、BACH1およびCtIPがDSB局所に集積できず、Rad51の集積も阻断されたのに対して、BRCA1-A複合体の集積は阻害されなかった。HP1ノックダウン実験でも同様な結果が得られた。HP1γとBARD1の結合はBRCA1-B及び-C複合体のヘテロクロマチン領域のDSB局所へのリクルートに必須で、その領域の相同組組換え修復に特化した役割を果たしていることが明らかにした。 免疫沈降解析では、BACH1 及びCtIPとHP1γの結合はDNA損傷によって誘導された。BRCA1-B及び-C複合体のヘテロクロマチン領域のDSB局所へのリクルートはHP1γとBARD1の結合を介した分子的メカニズムを示唆した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は計画に沿って研究を実施し、論文一本をまとめ、現在投稿中。概ねに順調に進んでいると評価したい。 本年度では、HP1γを介したBARD1とヘテロクロマチン領域のヒストンの結合は従来から知られているRNF8/RNF168による連続的なユビキチン化DNA損傷応答とは全く異なったDNA損傷応答経路であることを明らかにした。DNA損傷応答に新しい知見を提示し、今後の研究展開に確実な土台を築き上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
HP1γを介したBARD1とヘテロクロマチン領域のヒストンの結合は新たなDNA損傷応答経路として同定したことで、この修復経路の破綻は乳がんの発生に強く関わっていると推測しうる。この修復経路の破綻によるDNA二重鎖切断修復不全の分子機構の全容解明は今後の解決すべく課題となっている。 有効性ならび正確なデータ取得の観点から、CRISPR法にてBARD1変異体を遺伝子導入したノックインヒト細胞の作成は今後の実験展開に最も重要な実験手法と考えられる。CRISPR法にて作製したBARD1変異体細胞細胞を用いて、そのDNA損傷修復応答分子機構を詳細に解析し、野生型と比較しながら、HP1γ-BARD1-ヒストンDNA損傷応答経路破綻後にDNA二重鎖切断修復不全が起きるポイントを正確に捉えることが可能となり、この新しいDNA損傷応答分子機構を解明するに最も有用な方法と考えられる。 この修復経路の破綻は乳がんの発生原因になっているかどうかについては、臨床科と連携をとりながら、乳がんの臨床サンプルを用いる解析から最も説得力のあるデータを得ることができる。今後の研究展開できるように、臨床研究に関する倫理指針に基づき、臨床研究体制を整え、免疫染色解析や次世代次世代シーケンシング解析を行い、HP1γを介したBARD1とヘテロクロマチン領域のヒストンの結合破綻と乳がん発症の関連性について研究を進みたい。
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Research Products
(6 results)