2015 Fiscal Year Research-status Report
遺伝性心筋症の病因と病態形成機構の解明を基盤とした心不全治療・予防戦略の開発
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26460407
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
林 丈晴 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 准教授 (90287186)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 彰方 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (60161551)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心筋症 / 遺伝子解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究計画に挙げた以下の進行状況について、 1.既知原因遺伝子群の網羅的変異解析: 昨年立ち上げた、次世代シーケンサーを用いた67種の既知の心筋症原因遺伝子に関する変異解析の系を用いて、全国多施設より解析依頼された肥大型(HCM)、拡張型心筋症(DCM)患者DNAに多くの病的変異を同定し、結果を報告している。本年度は、これまでアジア、日本での報告がほとんどない小児、若年発症HCMに関してデータを集積した。成人の孤発性HCMでは10数%程度しか同定されないサルコメア遺伝子変異の同定率が小児、若年発症例では70%以上と高率であり、サルコメア変異を有する例では家族性に比べ、孤発性では発症年齢が低く、より予後が悪い可能性が明らかとなった。今後も変異データを集積し、臨床像との関連をさらに明らかにしてゆく。 2.原因不明症例の候補遺伝子解析:既知の原因遺伝子群に変異が見出されない患者集団に対し、新規候補遺伝子Aの複数の欠損変異をDCM患者に見出し、HCMにはAの複数のミスセンス変異を見出した。これらは、健常者集団には認められず、in-silico解析で機能変化が予測される変異であった。変異を有する培養心筋細胞を作製し、変異に伴う機能変化を明らかにし、Aの心筋での役割、および心筋症病態との関連を究明してゆく。 3.HCM多発大家系を対象とした網羅的変異解析:全エクソーム解析を施行し、家系内の罹患者すべてに共通に見出され、健常者集団に見出されない新規の心筋症原因候補遺伝子Xの変異を同定した。さらに遺伝子Xの変異解析をHCM、DCM集団に施行したところ、HCMに複数の別の変異を見出した。Xは液性因子であるが、今まで報告のない肥大抑制因子であると仮説をたて、培養心筋細胞を用いて複数の薬剤刺激により肥大させ、Xを投与したところいずれも肥大が抑制された。今後はさらにXの心筋での役割を精査してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
次世代シークエンサーを用いた既知原因遺伝子群の網羅的解析の系を新規に立ち上げ、多くの原因変異を見出し臨床へ報告、還元を行っている。候補遺伝子解析によりHCM, DCM双方に新規の原因候補遺伝子Aに変異を見出し、さらに、全エクソームシーケンスによる網羅的解析により、新規の心筋症原因遺伝子Xの変異を抽出、他のHCM患者にも複数の別の変異を見出した。さらにXは培養心筋細胞での複数の薬剤による肥大を抑制した。今後はXによる新規の治療法開発をめざす。これら成果の一部をまとめて、学会報告を行っており、複数の論文を投稿予定としている。
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Strategy for Future Research Activity |
多施設から依頼された心筋症患者DNAに対する既知原因遺伝子群の網羅的変異解析を引き続き行い、それぞれの施設へ結果を返却、臨床還元を行い、遺伝系―表現系の日本人独自のデータを蓄積してゆく。また、異なるアプローチにより新規に得られた心筋症原因候補遺伝子A, Xについて、正常、変異を導入した心筋細胞を用いたそれぞれの肥大反応の相違など、細胞レベルでの詳細な機能解析を分子生物学的、細胞生物学的に行い、特にXに関して新たな心筋症治療法の可能性について、肥大抑制メカニズムの解明を網羅的に進める予定である。
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Research Products
(5 results)