2014 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティック因子MBD5による発達障害発症機序の解明
Project/Area Number |
26460409
|
Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
目黒 牧子 金沢大学, 学際科学実験センター, 博士研究員 (20304222)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 自閉症 / エピジェネティクス / メチル化CpG結合ドメイン / 選択的スプライシング / Rett症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
自閉症や学習障害,注意欠陥多動性障害などの発達障害と診断される児童の数は年々増加傾向にある。近年の発達障害患者の全ゲノム解析により,MDB5(メチル化CpG結合ドメインタンパク質5)が欠失あるいは重複している症例が数多く報告された。同じメチル化CpG結合ドメインをもつMeCP2は自閉症を主徴とするRett症候群の原因遺伝子であり,MBD5もまた脳の発達過程において何らかの重要な役割を担っていると示唆される。そこで,本研究では神経細胞におけるMBD5のターゲット遺伝子の同定さらに,その制御メカニズムを明らかにすることにより,MBD5の脳での機能を明確にすると共に,メチル化CpG結合ドメインタンパク質を介したエピジェネティクスと発達障害との関連を解き明かすことを目的とした。そこで,MBD5ヘテロ変異ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞(MBD5+/-)の樹立し,マイクロアレイ解析にて発現変化のあった遺伝子を同定した。その結果,発現上昇を認めた遺伝子(transcripts)を71個,発現低下を認めた遺伝子(transcripts)を92個同定した。そのうち95%以上はタンパク質をコードしないnon-coding RNAであった。従って,MBD5がPre-mRNAの選択的スプライシングやmicroRNAのプロセシングに関与している可能性が示唆された。更に,今回MBD5+/-でおよそ2倍の発現上昇を認めたmicroRNA,MIR548A1は6p22.3に位置し,自閉症患者で欠失が報告されている。また,発現量がおよそ半分まで減少しているMOG遺伝子はナルコレプシーとカタレプシー家系の解析で変異が同定されており,両者は特に症状との関連からも大変興味深い。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は,樹立したMBD5ヘテロ変異ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞(MBD5+/-)において,発現変化の認められた遺伝子についてリアルタイムPCR法で,その発現変化を確認し,MBD5がPre-mRNAの選択的スプライシングやmicroRNAのプロセシングに関与している可能性が示唆された。本実験に関しては,研究計画に記載した通り遂行できたと考えている。また,MBD5と相互作用する分子を同定することを目的に,タグ付きMBD5タンパク質をHEK293細胞やHeLa細胞で強制発現させ,プルダウンアッセイを行ったが,全長MBD5タンパク質を高発現させることが出来なかったため,短くしたいくつかのMBD5タンパク質を発現するコンストラクト構築を行うなど,臨機応変に結果に対して対応してきた。
|
Strategy for Future Research Activity |
自閉症や学習障害,注意欠陥多動性障害などの発達障害の発症機序に関与していると考えられるMBD5の機能解析を継続して行う。平成26年度に行ったMBD5のプルダウンアッセイでは,HEK293細胞やHeLa細胞で全長MBD5タンパク質が高発現しなかったため,短くしたいくつかのMBD5タンパク質を発現するコンストラクト構築し,プルダウンアッセイを行った。平成27年度も継続して,プルダウンアッセイを行う予定だが,その際に,タグ付きMeCP2タンパク質,タグ付きMBD6タンパク質も併せて行うことで,メチル化CpG結合ドメインを持つ遺伝子と発達障害発症にどのような相関があるか明らかにする予定である。既に,平成26年度に行ったMBD6のプルダウンアッセイで,MBD6と相互作用する興味深いタンパク質が同定できているので,今後MeCP2,MBD5との相互作用についても併せて解析する。
|
Causes of Carryover |
研究計画では,MBD5のターゲット遺伝子であるMIR548A1およびMOG遺伝子欠損細胞株の樹立および神経細胞特異的なプロモーターの下流にMIR548A1をつないだ発現ベクターの構築を予定していたが,平成26年度は,MBD5,MBD6のプルダウンアッセイによるメチル化CpG結合ドメインと相互作用する分子の同定に注力したため,CRISPR-Casシステムを用いたMIR548A1およびMOG遺伝子欠損細胞株の樹立とMIR548A1の強制発現ベクターの構築を次年度に繰り越したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度の前期に,CRISPR-Casシステムを用いたMIR548A1およびMOG遺伝子欠損細胞株の樹立とMIR548A1の強制発現ベクターの構築を行う予定にしている。
|