2014 Fiscal Year Research-status Report
原発性胆汁性肝硬変の胆管病変におけるエネルギー代謝の解析と治療戦略
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26460416
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
原田 憲一 金沢大学, 医学系, 教授 (30283112)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 原発性胆汁性肝硬変 / ピルビン酸脱水素酵素複合体 / 慢性非化膿性破壊性胆管炎 / 解糖系 / 脂肪酸代謝系 / エストロゲン関連受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
原発性胆汁性肝硬変(PBC)で出現するピルビン酸脱水素酵素複合体(PDC)に対する自己抗体(AMA)の出現および慢性非化膿性破壊性胆管炎(CNSDC)による胆管消失の発生機序について、PDCに関連する解糖系エネルギー代謝について解析した。本年度は、ヒト胆管細胞を樹立後、血清減量にてperoxisome proliferator-activated receptor γ coactivator 1α (PGC-1α)発現を誘導するとエストロゲン関連受容体α(ERRα)の発現亢進とともに、PDC酵素活性の負の調節因子pyruvate dehydrogenase kinase(PDK)の発現、さらにPDC酵素活性の低下を来たし、胆管細胞における解糖系エネルギー代謝の低下を認めた。またcarnitine palmitoyltransferase 2(CPT2)などの脂肪酸代謝系関連酵素の発現亢進および酸化ストレスの亢進によるアポトーシス感受性亢進が見られ、解糖系エネルギー代謝減弱に対して代償性に脂肪酸代謝系への変換が起こっていると推測された。またPBC肝組織における障害胆管では、PGC-1α,ERRα, PDK4,CPT2,8OH-dG(酸化ストレスマーカー)の発現亢進が見られ、CNSDCにおける解糖系から脂肪酸代謝系へのエネルギー代謝の変換さらには酸化ストレス亢進によるアポトーシスの誘導がおこっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究内容として、ヒト培養胆管細胞の樹立と肝組織の収集、ヒト培養胆管細胞を用いたPGC-1/ERRαおよび関連分子の動態解析、ヒト肝組織を用いた関連分子の免疫組織化学的解析、さらに脂肪酸代謝系への変換によるアポトーシス感受性とPDC抗原性の解析について掲げた。最後の脂肪酸代謝系の変異によるアポトーシス誘導のPDC抗原性の解析のみが未検討であったが、おおむね初年度の研究目標は達成できたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では仮説に沿ったデータを得ており、研究全体としての大きな方向転換は不要と考えている。本研究課題の申請時の内容に沿って遂行する予定であり、まず初年度のやり残した内容である、脂肪酸代謝系の変異によるアポトーシス誘導のPDC抗原性の解析、また2年次以降の検討課題であるPGC-1/ERRα誘導機序の解析、PGC-1/ERRαとエストロゲン効果との関連性、PGC-1/ERRαと胆道系自然免疫応答と関連性について解析し、PBCを特徴付ける女性発症、ミトコンドリア抗体(AMA)やPDC抗体の産生機序およびPBCの病因としての胆道感染症の関与について解析を進める。
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