2014 Fiscal Year Research-status Report
前立腺癌の神経周囲浸潤におけるジストログリカン糖鎖の発現意義
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26460417
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
下条 久志 信州大学, 学術研究院医学系, 講師 (40324248)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 基弘 福井大学, 医学部, 教授 (00362137)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 前立腺癌 / 糖鎖 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジストログリカン (DG) はαとβの二つのサブユニットから構成され,α-DG は高度な糖鎖修飾をもつ(DG糖鎖)。前立腺癌ではDG糖鎖の減少が認められ,癌組織全体ではより浸潤性の増殖パターンを示す腫瘍ほどDG糖鎖の減少程度が大きい。一方,前立腺癌は神経周囲浸潤 (PNI) がよくみられる癌として知られ,PNIは癌の前立腺被膜外進展の経路として重要と考えられるが,PNIとDG糖鎖の関連は明らかでない。本研究では前立腺癌のPNIにおけるDG糖鎖発現が,癌の組織型や浸潤能・ 進展度・ 予後等と関連するとの仮説を検証するため,ヒト前立腺癌の検体を用いた解析と,培養細胞モデルを用いた解析を行っている。最初に,ヒト前立腺癌の生検組織100例程度を用いてα-DGコア蛋白とDG糖鎖の発現を免疫組織化学的に検討した。この結果,PNI部分の癌組織ではDG糖鎖の発現が背景の癌組織と異なる症例が約60%存在していた(増加と減少の両者を含む)。また,α-DGコア蛋白が不変または減少を示すにもかかわらず糖鎖発現が増加したものが認められ,これは糖鎖発現の減少した症例の割合を上回っていた。以上から,糖鎖発現からみた場合,PNIの癌細胞には背景の癌組織と異なる性質のものが含まれ,さらに,その癌細胞には様々な性質のものがあることが示唆された。現在,上記の検討に続き,組織マイクロアレイによる検討および培養細胞を用いた研究が進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度の研究計画にある手術検体からの組織マイクロアレイ作成において,標本上で確定した部位と実際のパラフィンブロックとの間にずれがあるため,標本部位の切り抜きに注意を要し当初の予定よりも時間がかかった。また,培養細胞を用いた研究で用いる糖鎖発現の制御方法を再検討した結果,当初予定していた方法から,より効果の高い方法への変更が望ましいと考えられ,これを行ったため準備に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの結果をふまえ,組織学的検討を生検組織から手術検体に拡大して行う。生検検体は組織量が限られているため,さらに多くのデータ収集を目的として,現在,手術検体からの組織マイクロアレイを作製し検討を行っているところであり,これを引き続き行う予定である。また,α-DG糖鎖の発現制御に関わる酵素の発現についての免疫組織化学的検討も行っているが,抗体を変更し繰り返し染色した結果は,現在までに培養細胞で報告されている所見とは異なっている。これについては培養系と組織標本上の条件の比較等を含め検討を加える予定である。一方,本年度の研究でα-DG糖鎖の発現をヒト前立腺癌の培養細胞で確認しており,次年度は,培養細胞を用いて浸潤能の研究を進める。
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Causes of Carryover |
試薬等の発注はその時点での最新の情報をふまえて最良のものを購入するようにしており,タイミングによっては購入に時間がかかるものがある。本年度,一部の消耗品が製造元品切れのため納入が年度末に間に合わなかったことや,研究方法の一部変更により使用予定であった試薬等の購入を次年度へ繰り越したことにより,次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した研究費は使用目的の明らかなものであり,現在進行中の培養細胞を用いた研究の消耗品費・試薬代として使用する予定となっている。
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