2014 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜スフィンゴ脂質のラフト形成を介した肺腺癌浸潤・転移への関与の解明
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26460442
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
上田 善道 金沢医科大学, 医学部, 教授 (50271375)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非小細胞性肺癌 / 浸潤・転移 / Sphigolipid / Sphingosin kinase-1 / Sphingosin-1 phosphate / 上皮間葉移行 / 細胞増殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
活性脂質に着目した非小細胞性肺癌の浸潤・転移に対する新規制御法の確立を目指し,肺癌浸潤先進部におけるsphingosin系の役割を外科切除肺癌 74組織と参考として口腔原発扁平上皮癌組織を用い検討した。 1.非小細胞性肺癌組織における sphingosin kinase-1 (SpK-1)の発現を western blotで示した。2.正常肺組織では Spk-1の発現は細気管支粘膜とII型肺胞上皮が主体であった。3.細気管支肺胞上皮癌に SpK-1の高発現を認めた。この発現は、Ki67、E-cadhelin喪失や vimentin発現との関連は認めず、細胞分化に起因すると考えられた。4.腫瘤辺縁部の浸潤性格の乏しい高分化腺癌部では SpK-1の発現は低下する一方、腫瘤中心部の腫瘍浸潤部では、腺癌細胞に SpK-1の高発現を認めた。微小乳頭癌成分における著明な SpK-1発現亢進も観察された。5.扁平上皮異形成部と扁平上皮癌膨張性発育部では SpK-1の発現は陰性~弱陽性だが、浸潤性扁平上皮癌の浸潤先進部に一致して SpK-1の高発現を認めた。浸潤性と SpK-1の関係が特に口腔癌で顕著に示された。6.非小細胞性肺癌浸潤部における SpK-1の発現は Ki67標識率とは相関せず、E-cadhelinの喪失と vimentin発現と有意な関連を認めた。 以上の所見から、非小細胞性肺癌浸潤先進部では SpK-1の発現誘導を介した sphingosin-1 phosphate (S1P)の産生が腫瘍細胞の EMTに深く関わっている可能性が示唆され、現在、生命予後を含めた臨床病理学的因子との関連、S1P受容体発現の解析、S1Pの定量と培養腫瘍細胞を用いた遺伝子発現修飾による実証を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの非小細胞性肺癌の浸潤・転移に関する研究から、検討材料の収集や実験条件の設定が行われており、Sphingosin kinase-1 (SpK-1)の肺癌組織における蛋白レベルの発現解析と細胞増殖ならびに上皮間葉移行 (EMT)に関する検討と生命予後も含めた臨床病理学データとの関連に関する統計学的解析がスムーズに進めることが可能となった。 新鮮凍結材料を用いた Sphingosin-1 phosphate (S1P)の受容体解析も現在進行中である。 組織中の S1P定量は連携研究者の岡崎に依頼済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
非小細胞性肺癌の sphingosin系による上皮間葉移行 (EMT)の誘導を介した浸潤・転移の亢進機構を、培養ヒト肺癌細胞(腺癌及び扁平上皮癌)を用いた遺伝子発現修飾実験により実証する。 加えて、研究計画に従い sphingomyelinによる脂質ラフトの構造変化を介した細胞膜上での浸潤・転移関連機能分子群の再分布,細胞内セカンドシグナル集約と浸潤能亢進に関する研究を進める。
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Research Products
(1 results)