2015 Fiscal Year Research-status Report
血管肉腫におけるスフィンゴシン-1-リン酸受容体の発現と治療への応用
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26460445
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
定平 吉都 川崎医科大学, 医学部, 教授 (30178694)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
秋山 隆 川崎医科大学, 医学部, 准教授 (80294411)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 血管肉腫 / スフィンゴシン-1-リン酸レセプター1 / スフィンゴシン-1-リン酸レセプター1 / 細胞走化性 / 細胞遊走 / 転移 / FTY720 / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)血管肉腫の原発巣と肺転移部をS1PR1に対する特異抗体を用いた免疫組織化学にて検討した結果、血管肉腫では、原発部位のみならず転移部位でもS1PR1が高発現していた。(2)血管肉腫細胞株MO-LASについてS1PR1~S1PR5の発現量をqRT-PCRにて検討した結果、S1PR1の発現量が他のS1Pレセプターに比較して著しく高いことがわかった。(3)MO-LASでは、細胞遊走に関連するシグナル伝達蛋白であるp44/42MAPK、STAT3、およびAKTが恒常的に活性化しており、Transwell assay やwound-healing assayのおいて、刺激物質の添加無しの状態でも細胞遊走が認められた。(4)S1PR1に特異的なsiRNAを、MO-LASにトランスフェクションした場合には、S1PR1の発現が著しく減弱し、S1Pのみならず10%ウシ胎児血清への走化性が有意に低下したが、p44/42MAPK (Erk1/2) (Thr202/Tyr204)、STAT3 (Tyrosine705)、およびAKT (Ser473)のリン酸化には影響はなかった。しかし、S1PR1の機能的アンタゴニストであるFTY720-Pの添加では、p44/42MAPK, STAT3, AKTのうち、STAT3のリン酸化のみが有意に抑制された。(5)S1PR2(細胞運動に抑制的に働く)のアンタゴニストであるJTE013でMO-LASを処理しても、FTY720-Pの強い細胞走化性の抑制効果の回復は認められなかった。 以上、FTY720-Pの添加では、S1PR1の細胞膜での発現がほとんど見られなることから、S1P/S1PR1シグナルの減弱によるSTAT3の活性化の抑制が、FTY720-Pによる血管肉腫の細胞遊走の抑制と関連している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度は、「血管肉腫におけるS1PR関連分子発現について」、血管肉腫の原発巣と肺転移部をS1PR1に対する特異抗体を用いた免疫組織化学にて検討し、血管肉腫では、原発部位のみならず転移部位でもS1PR1が高発現していることを確認した。さらに、血管肉腫細胞株MO-LASについてS1PR1~S1PR5について発現量をqRT-PCRにて検討した結果、S1PR1の発現が他のS1Pレセプターに比較して著しく高いことが判明した。 次に、「S1PR1の機能的アンタゴニストであるリン酸化FTY720(FTY720-P)が、S1Pおよび10%FBSへの走化性や、S1Pおよび10%FBSにより誘導される細胞遊走を抑制する機序について」検討した。MO-LASでは、細胞遊走に関連するシグナル伝達蛋白であるp44/42MAPK、STAT3 およびAKTが恒常的に活性化していたが、FTY720-P処置では、p44/42MAPK (Erk1/2) (Thr202/Tyr204)およびAKT (Ser473)のリン酸化は抑制されず、STAT3 (Tyrosine705)のリン酸化が抑制された。また、FTY720-Pによる強い細胞遊走の抑制効果が、FTY720-Pが結合しないと考えられているS1PR2を介したものではないことは、S1PR2のアンタゴニストであるJTE013を添加してもなおFTY720-Pの抑制効果がみられたことにより確認された。しかしながら、MO-LAS細胞における、S1PR3、S1PR4、S1PR5の発現と細胞遊走との関連性については、これらS1Pレセプター蛋白に対する特異抗体がなく、依然不明のままであり、当初の計画よりやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
①まず、平成26年度と27年度に行ったin vitroでの血管肉腫細胞株を使った実験結果の論文化を図る。 ②血管肉腫症例でS1PR1の高発現がみられることは判明しているが、S1PR1の発現の臨床病理学的意義については、なお不明である。平成27年度の研究結果より、血管肉腫細胞株MO-LASにおいて、p44/42MAPK (Erk1/2), STAT3, およびAKTの恒常的活性化が認められることが判明し、また、sphingosine kinase (SK1) mRNAの高発現も認められたことから、S1P/S1PR1のautocrine loopが血管肉腫の転移能を高めている可能性もある。特に、STAT3がS1P/S1PR1シグナルによって活性化されることも判明している。 以上から、平成28年度は、血管肉腫症例におけるS1PR1とその他のS1Pレセプター(特異抗体が入手できた場合)あるいはSK1と p-STAT3、 p-AKT、p-p44/42MAPK (Erk1/2)の発現と転移能との相関性を、主に免疫組織化学手法を用いて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の最終に注文した物品が推定額より安価であったため、10,360円の余剰がでた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に行う免疫組織化学に必要な物品の調達に充てる。
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Research Products
(2 results)