2014 Fiscal Year Research-status Report
低酸素微小環境によるHOX遺伝子の発現変化とがん細胞浸潤能の増強
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26460466
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
浜田 淳一 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (50192703)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転移 / ホメオボックス遺伝子 / HOX / 低酸素 / 浸潤 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに細胞の位置情報の担い手であるHOX遺伝子のひとつHOXD3の過剰発現がヒト肺がん細胞A549の転移・浸潤能を増強することを見出してきた。一方、固形がん組織においてしばしば存在する低酸素環境は、がん細胞の転移・浸潤能を増強する場合が知られている。そこで本プロジェクトでは、低酸素環境下でのHOXD3の発現とその転移・浸潤能に及ぼす影響、ならびに低酸素環境下におけるHOXD3過剰発現細胞の動態について検討した。その結果,以下のことが明らかとなった。A549細胞を24時間低酸素(1%)環境下で培養すると、低酸素応答遺伝子として知られるGLUT1やVEGFなどの発現が亢進した。また、ルシフェラーゼを利用したレポーターアッセイによって、低酸素環境下におけるA549細胞は低酸素応答領域(Hypoxia response element: HRE)に対してプロモーター活性を示すことが明らかとなった。さらに、A549細胞は低酸素環境下において、E-カドヘリンの発現を低下させ、かつビメンチン発現を増加させる傾向が認められ、低酸素刺激が部分的な上皮―間葉移行を引き起こす可能性が示された。一方、HOXD3を過剰発現させたA549細胞と空ベクタ-を導入した対照細胞を比べてみると、HOXD3過剰発現細胞は低酸素環境下におけるHREに対するプロモーター活性が有意に高いことがわかった。これまでに、HOXD3過剰発現A549細胞は対照細胞に比べて細胞運動能が高いことを報告してきた。これらの細胞を低酸素下で培養し、それらの運動能を測定したところ、HOXD3過剰発現細胞と対照細胞間の運動能の差は常圧(21%酸素)でのアッセイに比べ、より大きくなることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
HOXD3過剰発現細胞の低酸素環境下における腫瘍生物学的性状を対照細胞と比較しながら明らかにすることができた。一方、低酸素刺激によるHOXD3遺伝子の発現亢進機構については、HOXD3のプロモーター領域のクローニングがうまくいかず、計画どおりに進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
HOXD3を過剰発現することによる低酸素環境における細胞増殖、生存、運動などの優位性について、腫瘍細胞生物学的ならびにxenograftモデルを使用した病理組織学的な解析をさらに進めていく。HOXD3遺伝子のプロモーター解析については、あらゆるデータベースならびに国内外の研究者の知見を集め、まずプロモーター領域のクローニングを成功させるべく戦略を構築し実施する。
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Causes of Carryover |
平成27年3月に購入した物品の一部は、平成27年の4月に入ってから支払われたために、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記の理由で判るように、実際には平成27年度に使用できる残額はないので、その計画は立てられない。
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