2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460477
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
島田 啓司 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (90336850)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ユビキリン2 / 尿路上皮癌 / 尿細胞診 / 免疫細胞学的解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに、膀胱尿路上皮癌細胞(urothelial carcinoma, UC)は、正常尿路上皮細胞に比して活性酸素種(ROS)を過剰に産生し、これが癌の発生や進展に深く関与することを報告した(Shimada K. et al. BMC Urol 2011, Clin Cancer Res 2012)。一方、ROSは酸化ストレスによって異常蛋白質の蓄積を介してERストレスならびに細胞死をもたらすことが知られている。そこで、細胞内に蓄積した異常蛋白質を効率よく分解するユビキチン・プロテアゾーム関連分子に着目し、UCと正常尿路上皮細胞とを網羅的に比較検討したところ、異常蛋白質をプロテアゾームに効率よく運搬する足場蛋白質、ubiquilin2がUCにて高発現することを発見した。 平成26年度は、この分子を標識することで尿中に剥離した細胞から癌細胞を効率よく検出できるか否かを検討した。本分子に対するモノクロ―ナル抗体を作製し、自然尿検体中の剥離細胞に対して免疫細胞染色を行ったところ、尿細胞診の診断精度、特に診断感度に改善が認められた(感度90.9%、特異度98.6%)。中でも、高異型度・浸潤性 UCについては、核に強く染色される傾向があり、陽性細胞を検出しやすい利点に加え、尿細胞診の段階で悪性度を推定できる。また、尿管カテーテル尿、腎盂尿など上部尿路系腫瘍の検体においても同様の傾向を確認できた(Shimada K et al. Diagnostic Cytopathology, in submission)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
抗ubiquilin2抗体を用いた免疫細胞染色による尿細胞診断精度向上に関する研究を、計245症例(陰性:143症例、陽性:102症例)を用いて行い、統計学的解析も終了している。また、本研究は科学技術振興機構の資金協力を得て、国内及びPCT出願を行い、現在、米、英、独、仏に順次、各国移行を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究実績から、UCでは正常細胞に比してubiquilin2が安定持続的に高発現していることが判明した。今後は、膀胱癌、腎盂尿管癌手術検体を用いた病理組織学的検討に加え、UCにおけるubiquilin2の細胞生物学的意義を解明し、治療上の標的分子となりうるか否か、解析を進める。 平成27年度は、奈良県立医科大学・医療倫理関連の規定に則り、膀胱癌手術検体100~150症例、腎盂尿管癌検体40~50症例を収集し、UCやその特殊亜型におけるubiquilin2の発現態様を免疫組織化学的に解析するとともに、尿細胞診検体を用いた免疫細胞学的解析結果との整合性を検討する。 平成27年度後半から28年度は、種々のUC細胞株を用いubiquilin2 gene silencing(siRNA導入法)手法によって、ubiquilin2のROS誘導性細胞毒性に及ぼす影響を解析する。細胞毒性については、apoptosis、senescence、cell cycle arrestの他、autophagyも検討項目に加え、そのシグナル伝達を明確にするとともに、ヌードマウスを用いた同所性移植実験を行う予定である。 これらの基礎データから、ubiquilin2がUCの生存に不可欠な分子であると考えられれば、ubiquilin2の機能を遮断しうる薬剤を特定し、あらたな腎盂・尿管、膀胱癌治療指針を構築できると期待される。
|