2014 Fiscal Year Research-status Report
難治性多発性骨髄腫に対する「小胞体ストレス誘導療法」の確立
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26460478
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
宮澤 啓介 東京医科大学, 医学部, 教授 (50209897)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平本 正樹 東京医科大学, 医学部, 講師 (70297828)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 小胞体ストレス / オートファジー / プロテアソーム / アグリソーム / ボルテゾミブ / マクロライド化合物 / 多発性骨髄腫 / ヒストン脱アセチル化酵素6 |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロライド系抗生剤クラリスロマイシン(CAM)は,多発性骨髄腫(MM)細胞や乳癌細胞株ならびにマウス胎生線維芽細胞(MEF)に対してオートファジー阻害活性を有することを明らかにした。また,CAM単独添加培養では細胞毒性を発現しないが,プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BZ)と併用することで殺細胞効果が増強した。これは,細胞内二大タンパク質分解機構であるオートファジー・リソソーム系とユキキチン・プロテアソーム系とを同時に阻害することで,小胞体(ER)ストレス応答を介したアポトース誘導が増強したと考えられる。一方,正常な立体構造として折りたたまれないミスフォールドタンパクは凝集体を形成し,さらにヒストン脱アセチル化酵素6(HDAC6)とダイニンとの共同によりアグリソームを形成することが知られている。そこでMM細胞株に対して,HDAC6阻害活性を有するボリノスタット(SAHA)をBZ/CAM同時添加培養系に追加したところ,ERストレス負荷はさらに著増しアポトーシス誘導が亢進した。また,BZ/CAM同時添加により,ビメンチン陽性のアグリソームが核膜周囲が形成され,この周囲にはオートファゴソーム・オートリソソームおよびミトコンドリアの集簇像が観察された。しかし,これらアグリソーム・細胞内小器官の集簇は,SAHAの添加により抑制された。また,BZ/CAM/SAHAの3剤併用時には,ERストレス性のアポトーシス誘導転写因子CHOPの発現が著増し,CHOPノックアウトマウス由来のCHOP-/-MEFならびにsiRNAによるCHOPノックダウンMM細胞株では,この殺細胞増強効果は著しく減弱した。以上より,細胞内二大タンパク質分解系とアグリソーム形成には,巧妙なネットワーク機構が形成されていると考えられ,これを計画的な遮断することでERストレス負荷を介した細胞死が効率的に誘導されることが示唆された。現在,CAMの阻害活性における標的分子の探索を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
in vitroの実験系で,オートファジー・リソゾーム系,ユビキチン・プロテアソーム系およびアグリソーム系の同時阻害により,小胞体ストレス負荷が著しく上昇し,かつ,アポトーシス誘導性の転写因子CHOPの活性化により強力に骨髄腫細胞のアポトーシス誘導能が高まることを明らかにした。オートファジー阻害剤としては,マクロライド系抗生剤のクラリスロマイシン,アジスロマイシンを使用しているが,その阻害活性の標的分子の同定ならびに分子機構は明らかにされていない。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性磁性ナノビーズ(FGビーズ)にアジスロマイシンを固相化し,AZMとの結合分子の同定を進めることで,マクロライド系化合物によるオートファジー阻害活性の分子機構の解明を進める。
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Research Products
(6 results)