2015 Fiscal Year Research-status Report
自閉症高感受性遺伝子ニューロリギン4Xのエピジェネティックな発現制御機構の解析
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26460483
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Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
飯尾 明生 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 発生障害学部, リサーチレジデント (80344349)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | NLGN4X / 自閉症 / エピジェネティックス / MeCP2 / iPSC / CpGメチル化 / mTOR / AVP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヒト自閉症高感受性遺伝子ニューロリギン4X(NLGN4X)について、自閉症での遺伝子発現の変化の有無、その発現の増減が自閉症発症の原因なのか結果なのか、その発現の増減を引き起こす非遺伝的背景は何なのか明らかにすることを目的としている。本年度は、浸透圧ストレス存在下におけるNLGN4Xの発現調節メカニズムの解析、ならびにヒトiPS細胞の神経細胞への分化誘導におけるNLGN4Xのメチル化を介した発現調節について解析した。 高浸透圧ストレスは、NLGN4Xを発現する視床下部室傍核、視索上核に存在するAVP/OXT神経でのAVP/OXT分泌を促進する。そこでNLGN4Xの浸透圧感受性を調べたところ、負荷14時間よりmRNA量が増加し、24時間以降タンパク量が増加した。この増加はAVP/OXTに比べかなり遅い変化であった。一方、NLGN4Xの発現上昇はmTORシグナルの阻害剤PP242により抑制されたことから、高浸透圧ストレスがmTORシグナルを介して NLGN4Xの転写翻訳促進に働いていることが考えられた。NLGN4XとAVPの関係を確かめるため、siRNAによりNLGN4Xをノックダウンすると、AVPの分泌上昇が観察された。また、NLGN4Xの免疫沈降により、リソゾームタンパク質の結合が観察された。このことから、NLGN4XはAVP分泌顆粒のターンオーバーに働いている可能性が考えられた。 繊維芽細胞、201B7 iPS細胞、胚様体、神経幹細胞の各段階でNLGN4Xのエキソン特異的な発現に関与するプロモーター領域のCpGメチル化についてMSP-qPCRにより解析したところ、エキソン1Aでは発現上昇に伴ったメチル化の有意な減少、エキソン1Cでは完全なメチル化の消失が観察され、プロモーター領域のメチル化の消長と発現変化の関係が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
論文作成とそれに伴った補足実験に労力を要したため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度はNLGN4Xの発現変化によって影響を受ける分子の探索及び解析とlncRNAによる発現制御メカニズムの解析を中心に行う。具体的には、NLGN4Xの発現変化が、どのようなしくみでAVP (またはOXT) の分泌に影響を及ぼしているのか、crinophagyなのかnascent granule degradationなのか、NLGN4X に結合するリソソームタンパク質LAMP-2がどう関連しているのか、分泌顆粒構成分子であるAP4M1やCAPS2との結合を介して直接分泌を調節しているのかどうか調べる。次にlncRNAが直接、あるいは間接的に結合しているタンパク質、ゲノム配列をRNA-IP法により同定し、NLGN4Xとの相互発現調節機構について解析する。また、自閉症患者由来iPS細胞を用いて、NLGN4Xの発現や機能の変化と表現型(メチル化、神経突起の伸長、成熟、シナプス形成、神経伝達物質の分泌など)の相関について調べる。
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Causes of Carryover |
消耗品購入の際の差額が生じたため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度消耗品費に繰り越す
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