2015 Fiscal Year Research-status Report
ヒトiPS細胞由来3次元培養組織を用いたウイルス大脳感染機序の解析
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26460487
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Research Institution | Hamamatsu University School of Medicine |
Principal Investigator |
河崎 秀陽 浜松医科大学, 医学部, 助教 (90397381)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩下 寿秀 浜松医科大学, 医学部, 教授 (00283432)
小杉 伊三夫 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (10252173)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | サイトメガロウイルス / iPS / 三次元培養 / neurovascular unit |
Outline of Annual Research Achievements |
日本では毎年約1000人の神経障害をもった症候性サイトメガロウイルス(CMV)患者が発生している。ダウン症につぐ大きな先天異常であり毎年膨大な医療費を必要とする。今回の研究ではこれらの新しい技術を用いて、申請者らが提唱してきたマウス大脳CMV感染モデルをヒトモデルで検証し、ヒトCMV中枢神経感染特有の新たな病理機序の解明や治療法につなげることを目的としている。 まず申請者らはヒトiPS細胞より3次元大脳組織を安定的に作成するための技術を獲得する計画である。作成されたヒト3次元大脳組織を用いてHCMVの感染実験を行い、今まで申請者らが提唱してきたマウスCMV大脳感染モデルがヒト大脳モデルにおいても成り立つかを検証する。次に血行性大脳感染時においてHCMVがいかにしてBBBの破綻を引き起こし、脳実質に侵入するのかを検索する予定である。そのためにヒトiPS細胞より血管内皮細胞、血管周皮細胞を分化・分離後にin vitroヒトBBB 3次元モデルを作成し、CMV感染実験を行う計画である。 実際のウイルス感染の病理をマウスで解析するために、新生仔マウスを使った血行感染により、ウイルス粒子と感染パターンの詳細な検索をおこなった。MCMVの髄腔内/静脈内投与では、microbeadsの分布とウイルス感染分布はほぼ一致することがわかった。NIH3T3でのCD29のknockdownやfunctional blockingでMCMV感染感受性は低下した。MCMV血行性/髄腔内感染どちらにおいてもCD29高発現細胞とMCMV感染細胞とは90%以上の相関がみられた。これらの結果から大脳における急性期CMV感染分布を規定するうえで、MCMV粒子の物理的な広がりとCD29の発現の両方が重要であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回申請ではヒトiPS細胞由来の大脳組織を安定的に供給できる方法を詳細に検索し明らかにする。そして作成された大脳の高次構造の確認を行った後に、マウス大脳CMV感染モデルの検証・解析を行う予定であった(①~④)。次にHCMVがBBBの破綻を如何にして引き起こすのかをin vitro BBBヒトモデルで実験し、 MMP9, CyPA因子を中心にCMVのBBB破綻機序の解析をする(⑤,⑥)。以下が①~⑥までの計画の詳細である。①:ヒト3次元培養脳においてHCMV感染で小頭症を誘発するか否かの検討。②:ヒト3次元培養脳におけるSOX2、nestin陽性神経幹/前駆細胞のHCMV感染感受性の確認。③:神経幹細胞より分化した新生ニューロンの移動がHCMVによって阻害されるか否かを解析。④:ニューロンでHCMVが持続感染するのか否か、ヒト三次元培養脳で明らかにする。⑤:ヒトiPS細胞より血管内皮細胞、血管周皮細胞を分化させ、transwellに付着培養させる。in vitro BBBモデルを確立した後にHCMVを感染させ、BBBの透過性の亢進性を検討する。⑥:HCMV感染後のBBBにおけるCyPA, MMPの蛋白発現量の変化や、MMPによる蛋白分解能を調べる。 またBBB破綻に関わる新規蛋白の検索や、BBB保護作用のある薬物を検索する。 現在はヒト新生児皮膚線維芽細胞にOCT3/4, SOX2, c-MYC, Klf4を導入し、ヒトiPS細胞を樹立した。樹立後ヒトiPS細胞の未分化マーカーの発現を確認し、現在feeder freeの状態で安定的なiPS細胞培養方法を獲得した。実際のウイルス感染の病理をマウスで解析するために、新生仔マウスを使った血行感染により、ウイルス粒子と感染パターンの詳細な検索をおこなった。しかしヒトiPS細胞から3次元培養脳の作製の条件の確定ができず、計画が遅れている。また以前の科学研究費の計画であった研究成果がAmerican journal of pathologyにpublishされたが、そのacceptまでの作業によって①~⑥までの当初の計画に遅れがでている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後以下の実験を推進していく予定である。 (1)ヒトiPS細胞より3次元大脳組織の作成・培養方法の確立(①~⑤)①:ヒトiPS細胞作成:倫理委員会で承認を得たヒト新生児皮膚線維芽細胞にセンダイウイルスで山中因子(OCT3/4, SOX2, c-MYC, Klf4)を導入し、iPS細胞を誘導する。iPS細胞樹立後には未分化マーカーの確認と、多分化能の確認を行う。また定期的に染色体検索を行う。すでにヒトiPS細胞の樹立には成功しているが、新たなiPS細胞を樹立するときには同様の過程を行う予定である。②:ヒトiPS細胞約4500個を非接着性96穴プレートに移し、ROCK阻害剤とともに培養し、Embryoid body(EB)を作成する。EBは6日間培養後の非接着性の24穴のプレートに移す。③:EBはDMEM/F12, N2, Glutamax, MEM, heparinを含有した神経分化培液に移し替える。5日後、パラフィルムの上に置いた冷えたdroplet matrigel(BD bioscience)に神経上皮に分化した細胞塊を移し替える。37℃でmatrigelが固まった後、大脳分化培地(DMEMとneurobasalを1:1の割合で混合し た基本培地にN2, B27, mercaptoethanol, insulin、Glutamaxを含有した培地)にて4日間静かに培養する。④:その後大脳分化培地(前述の培地からB27をのぞき、vitamin Aを含んだ培地)の中で神経細胞塊をバイオリアクアクターで攪拌し、酸素と栄養を細胞塊に均一に供給させながら大脳組織を成長させる。⑤:②から④までを実行することにより大脳組織が安定的に作成されると予想される。しかし何種類もあるmatrigelのどれが最適なのか、攪拌培養時の最適攪拌スピードなどの細かい条件設定は論文に記されておらず、試行錯誤の中から安定した培養条件を探索する予定である。 また血管の構造が感染成立に非常に大事であることがわかり、今後は3次元血管分布とBBB構造をもつ脳組織の3次元培養の基礎的な研究を進めていく予定である。
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Research Products
(4 results)