2015 Fiscal Year Research-status Report
骨髄内・外からの破骨細胞分化制御機構と骨粗鬆症治療法の開発
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26460488
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
林 眞一 鳥取大学, 医学部, 教授 (50208617)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 炎症 / 破骨細胞 / 骨髄細胞 / 腹腔細胞 / 自然リンパ球 |
Outline of Annual Research Achievements |
長寿大国の我が国は、莫大な老人医療費、Quality of Lifeなど様々な問題を抱えている。その中で閉経後の女性に頻発する骨粗鬆症の予防法ができれば影響は極めて大きい。その予防法を一般化するために、1、単純で安価なこと、2、確実な効果があり、3、一度の処置で効果が持続でき、さらに、4、副作用を伴わない非侵襲性のものが望まれる。本研究は基礎研究から破骨細胞分化効率を恒久的に低下させる機構を理解し、骨粗鬆症治療へと応用するために標的とする細胞系譜を特定し、骨粗鬆症の発症を阻止し、本研究成果を社会へ還元することを目的としている。
平成26-27年度は1、腹腔低張処理によって失われる破骨細胞分化制御に関わる腹腔内に存在する細胞群と、2、骨髄中に存在する破骨細胞分化制御細胞群の性質を明らかにすることを目指して、研究を実施した。その結果、腹腔低調処理により除去される細胞群は、一度処理して除去すると再び供給されない性格の細胞群で最近、注目の自然リンパ球の一部を指す可能性が出てきた。腹腔の制御機構はXidマウスでは欠損しているので、自然リンパ球の関連が結び付けば今迄に見出されていない制御機構が明らかにできる。 27年度は特に、2、の骨髄内の制御細胞群の解析が進み、骨髄細胞中の制御細胞を戻すことで機能解析が可能となった。その結果、CD4陽性のT細胞とCD8陽性のT細胞が同じ経路に重複して要求される制御機構の存在が見出された。この制御機構はCD4或いはCD8のT細胞のどちらかを遮断することで破骨細胞分化をほぼ半分に制御できる。興味あることに、T細胞抗原受容体のトランスジェニックマウスではこのT細胞機能が低下していることから、抗原特異性が重要かもしれない。 以上の結果は、破骨細胞の分化制御は複数の細胞系譜の関与が予測され、この機構の解明が本研究成就への道であることがはっきりした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に述べたように、申請時に予定した検討項目を順調に進めてきている。腹腔内に存在すると想定される制御細胞が自然リンパ球である可能性が見出され、骨髄内に存在するT細胞系譜の性質の検討とともに標的細胞が見えてきた。その意味でも本年度の達成度は順調だったと言えると思う。最終年度となった28年度、成就に向けて邁進するつもりである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は、破骨細胞分化制御細胞を同定・単離し、此の細胞系譜を除くあるいは戻すことで、試験管内のみならず生体内でも機能を再現させ。本研究の最終目的である骨粗鬆症モデルの改善を誘導する。 1、腹腔制御細胞の処理による恒常的な効果を確認する。(1)腹腔低張処理マウスへの自然リンパ球の投与による骨髄破骨細胞分化の回復。この実験により腹腔における制御細胞を確認する。(2)骨粗鬆症モデルシステムに、腹腔制御細胞を除去した場合、予防法としての効果が見出されることを、発症後の改善を指標に検討する。(3)骨破壊性疾患における関与の有無と治療への応用の可能性を検討する。 2、骨髄内T細胞系譜の処理による一時的な効果を検討する。1と同様な検討をT細胞系譜の除去と添加により確認する。腹腔の処置に比べて、この骨髄の処置が一時的であることも確認する。 3、選択的破骨細胞分化制御細胞の除去法の開発。ヒトへの応用を考えたとき、マウス(3 mL)のスケールで算定すると、腹腔に5L の水を注入することになり、現実的ではない。少なくとも、予防的に一定年齢に達した女性全員に投与する目的としては適切ではない。腹腔に存在する標的細胞が確定出来れば、特異的に除去するための特異的な抗体で対応する。腹腔内の細胞だけを処理できるような処置法を検討する。抗体をビーズに結合させて、不溶化する等の方法があるので、順に検討する。 本研究で計画した実験は、いたって単純で、かつ再現性が極めて高い実験を基礎にしている。3年間で、この破骨細胞分化制御機構をヒトへの応用を目指して、マウスモデルを用いて理解すれば、近い将来、有力な予防法として、多くの骨粗鬆症の発症を防止できると期待している。平成28年度:申請書に記したようにマウス購入、維持、各種培養試薬、器具、そして刺激因子等の消耗品中心の研究費が必要であり、その予定で研究を推進する。
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Research Products
(6 results)