2015 Fiscal Year Research-status Report
8-オキソグアニンが引き起こすドパミン神経変性の分子機序の解明
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26460490
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
盛 子敬 九州大学, 生体防御医学研究所, 研究員 (90467895)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | パーキンソン病 / 8-oxoG / MTH1,OGG1,MUTYH |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,パーキンソン病(PD)の発症機構として、「酸化ストレスがドパミン神経変性を引き起こす分子機序」を8-oxoGの蓄積とMTH1、OGG1、MUTYHの関与に注目し、解明する事を目的としている。 平成26年度に、OGG1/MTH1二重欠損マウス (DKOマウス) が野生型マウスと比較して、オープンフィールドで多動、運動亢進を呈する事を明らかにした。握力試験において、DKOマウスは野生型マウスと比較して、MPTPに暴露した後より顕著な握力低下を示した。さらにhMTH1トランスジェニックマウスは、MPTPによる運動亢進に対して顕著な抵抗性を示すことが明らかになった。 平成27年度には、Mutyh 遺伝子欠損マウス(KO マウス)を用いてMUTYH によって開始されるDNA修復反応がMPTP投与PDモデルマウスにおけるドパミン神経脱落の引き金となる可能性を検討した。 野生型(C57BL/6J)、OGG1-KO、Ogg1/Mutyh-DKOマウス(12ヶ月,♂)について、MPTPを投与しないコントロール群とMPTP投与群について行動解析を行った。MPTP投与1週間後、2週間後、3週間後、4週間後に、オープンフィールドで運動量を測定したところ、MPTP投与により野生型およびOGG1-KOマウスは運動亢進を示したが、Ogg1/Mutyh-DKOマウスは運動亢進を示さず、MPTPに抵抗性である可能性が示唆された。握力試験でははっきりとした差は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,パーキンソン病(PD)の発症機構として,「酸化ストレスがドパミン神経変性を引き起こす分子機序」を8-oxoG蓄積とMTH1、OGG1、MUTYHに注目し、解析を進めている。MPTP投与マウスで運動亢進や握力低下などのパーキンソニズムを示す兆候を認めている。さらにOGG1/MTH1二重欠損マウスが野生型マウスと比較して、より顕著なパーキンソニズムを呈し、hMTH1トランスジェニックマウスでは顕著な抵抗性を示すことから、MTH1とOGG1はパーキンソニズムの発症を抑制すると考えられる。さらに、OGG1-KOとOgg1/Mutyh-DKO マウスでの実験結果から、MUTYHがパーキンソニズムの発症を促進する可能性が示され、仮説を支持する結果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
行動解析実験をマウスを追加して実施する。また、これまでに行動解析が終わったマウスの剖検脳を回収しており、8-oxoGの蓄積と神経細胞の変性、脱落、ミクログリオーシスなどに注目した病理解析を進めていく計画である。特に、核とミトコンドリアDNAにおける8-oxoGの蓄積を詳細に検討する。さらに、野生型マウスとMth1/Ogg1 DKOマウスや、Ogg1-KOマウスとOgg1/Mutyh DKOマウスの比較解析から、8-oxoGの蓄積と神経細胞脱落、ミクログリオーシスなどの病理変化の相関関係を明らかにする。ドパミン神経変性の程度をチロシン水酸化酵素の免疫染色などを用いて評価し、PARP-AIF経路およびカルパイン活性化の関与を検討する。
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Causes of Carryover |
マウスの行動解析に時間がかかり、剖検脳の病理解析まで実施できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
マウスの繁殖維持、および病理解析に必要な抗体等の購入に使用するとともに、実験補助員の短期雇用を計画している。
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