2014 Fiscal Year Research-status Report
CAMDIによる脳形成の分子基盤とマウス行動に与える影響との関連解析
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26460495
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
福田 敏史 東京薬科大学, 生命科学部, 講師 (50372313)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CAMDI / 統合失調症 / 自閉症 / HDAC6 / モノアミン |
Outline of Annual Research Achievements |
1.CAMDIノックアウトマウスの行動解析 胎児大脳皮質の神経細胞移動に重要な役割を担うことが明らかとなった新規分子CAMDIのノックアウトマウスを用いた行動解析を行った。その結果、強制水泳試験における抑うつ状態の増加、初対面のマウスに対する社会的相互作用の減少、新規環境における多動が認められた。これらの表現型は、自閉症患者に認められる症状と酷似していた。また、CAMDIはHDAC6と結合し、その活性を抑制することを明らかにした。そこでHDAC6の阻害剤を用いて行動異常の回復を試みたところ、一部の行動試験において回復が認められた。CAMDI遺伝子は自閉症患者におけるリスク領域(2q31)に存在することから、CAMDIノックアウトマウスは統合失調症や自閉症を含む精神疾患のモデルマウスになる可能性が示唆された。
2.CAMDIノックアウトマウスにおける脳内モノアミンの解析 CAMDIノックアウトマウスが精神疾患様の行動を示したことから、その要因の一つとして考えられている脳内モノアミンの解析を行った。その結果、中脳においてドーパミン、セロトニン、ノルエピネフリンの有意な減少が明らかとなった。その原因として中脳背側縫線核のTH(ドーパミン合成律速酵素), TPH2(セロトニン合成律速酵素)陽性の細胞数の減少が認められた。そこでヒトの治療に用いられるセロトニン再取り込み阻害剤 (SSRI)の一つであるFluoxetinを投与したところ、新規環境における多動が減少した。一方で、抑うつ状態の増加に回復は認められなかった。CAMDIノックアウトマウスにおける行動異常の一部は、脳内モノアミンの減少によるものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は交付申請書に記載したCAMDIノックアウトマウスの行動解析を行い、自閉症に酷似した表現型を示すことを明らかにした。また、初代神経細胞を用いた解析により、CAMDIノックアウトマウスでは軸索と成長円錐に異常が認められた。達成度については、おおむね順調に進展している。さらに、HDAC6阻害剤により、一部の行動や成長円錐の形態の回復が認められており、今後さらに解析を進める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
CAMDIと新たに結合することを見いだしたHDAC6によって脱アセチル化される分子としてHSP90があり、そのアセチル化状態によりグルココルチコイド受容体の活性を制御している。また、CAMDIノックアウトマウスは抑うつ様行動を示す。ストレスホルモンであるグルココルチコイドの定量と受容体の増減や活性化、個体レベルでのストレスへの応答を検証する。脳内モノアミン減少がその産生細胞数の減少であることが明らかとなったので、産生細胞の増殖、分化、成熟にCAMDIが関与するメカニズムを分化マーカーの発現時期を組織免疫学法、定量PCR法を用いて詳細に検討する予定である。
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Causes of Carryover |
予定していた人件費・謝金として使用しなかったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の謝金として利用する。マウスの解析や細胞培養を行ってもらう予定である。
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