2014 Fiscal Year Research-status Report
動物寄生線虫(糞線虫)の宿主環境知覚に伴う発育再開メカニズムの解明
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26460509
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
長安 英治 宮崎大学, 医学部, 助教 (20524193)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 糞線虫 / 発育再開 / GFAT / 動物寄生線虫 |
Outline of Annual Research Achievements |
交付申請時点において、外界において発育停止状態にある糞線虫は動物宿主体内で自身の周囲の①グルコース濃度の上昇、②アミノ酸濃度の上昇、③温度の変化を感じ取り、発育を再開する可能性を示唆した。また、GFAT (Glutamine:fructose-6-phosphate amidotransferase)遺伝子発現の変化が、糞線虫幼虫発育再開の指標として使える可能性を示唆した。 平成26年度はこれらの可能性に関し、より細かく条件を設定し糞線虫にとってどの程度の温度変化、グルコース濃度の上昇、またアミノ酸濃度の上昇が発育再開を促す刺激として用いられているのかを検討した。 グルコース濃度に関しては0-4.5g/Lの範囲でin vitroでの発育再開刺激実験を行った。その結果、GFAT遺伝子発現量への影響は1g/Lを超える濃度で顕著であった。これは宿主動物における生理的グルコース濃度に一致し、上述の仮説と矛盾しない。 アミノ酸に関しては市販の12種類のアミノ酸の混合液を段階希釈してin vitroでの発育再開刺激実験に用いた。また温度変化については27, 30, 34, 37, 40℃でグルコース/アミノ酸存在下での刺激実験を行い、GFAT発現量解析のための虫体を回収、保存した。 ヒトに感染する糞線虫種であるStrongyloides stercoralisにおけるGFAT遺伝子タンパクコーディング領域及び発現調節領域の遺伝的多型を調べる目的で、ミャンマー、タイ、沖縄の糞線虫虫体を入手し、PCRを行うためのcrude lysateとして保存した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26度においてベネズエラ糞線虫GFAT遺伝子座の発現調節領域をクローニングする予定であったが、現在のところ達成されていない。当該領域の極端なA/Tリッチな塩基組成のため適切な(きちんと働く)PCRプライマーを設計できずにいるためである。 また、研究室が入居する建物の耐震補強工事にともなう新たな動物飼養施設の立ち上げの際に、in vitro刺激実験に必要な虫体の入手のための動物感染実験が困難な時期があったことも実験計画に若干の遅れをもたらした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後のin vitro発育再開刺激実験においては一回の実験に用いる虫体数を減らし、一度により多くの条件を検討できるようにする。また、現在発現量解析のためのRNA調整法が非常に手間のかかるものであることも、多くの実験をこなせない原因になっていることから、RNA調整プロトコルの見直しをおこなう。 当研究室を含めた国際プロジェクトとしてのベネズエラ糞線虫全ゲノム配列決定がほぼ完了している現状をふまえ、これまで様々な条件下で行ったin vitro刺激実験に由来するRNAサンプルを用い、GFAT遺伝子のみでなく、トランスクリプトーム全体の動きを観察する。 引き続き、GFAT遺伝子座の発現調節領域のクローニングに取り組む。
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Causes of Carryover |
平成26年度に実施予定であったGFAT遺伝子上流領域に結合するタンパクの解析が、当該領域のクローニングのおくれから実施できなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
引き続き、GFAT遺伝子上流領域のクローニングに取り組み、前年度使用予定であった額をその後の当該領域に結合するタンパクの解析に充当する。
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