2015 Fiscal Year Research-status Report
集団ゲノム学の先端的解析手法を用いたグローバルなマラリア拡散ダイナミズムの解明
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26460515
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | マラリア / 薬剤耐性 / 進化 / 地理的拡散 / 集団遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、流行地を網羅する熱帯熱マラリア原虫集団を用いて、薬剤耐性マラリア原虫が耐性起源地からアフリカに至り、大陸内を拡散する経路を解明することである。本年度の成果は以下である。 1.解析マイクロサテライト座位の集団遺伝学的特徴をあきらかにし、集団構造を解析するためのマイクロサテライト座位を決定した。2.1で決定したマイクロサテライトマーカーを用いて、マラリア集団の類似度を検討した。指標としては集団としての分化度を用いた。その結果、島嶼であるバヌアツのみ特異な分化をしていることがあきらかになり、本課題の解析から除外することとした。その他の島国ではさほど特有な分化は見られなかった。3.STRUCTURE2.3を用いて原虫集団のグループ構造を推定した。その結果、ΔKの算出から、分集団数としてK=4が最も高い適合を示した。解析では原虫検体の採取地情報を事前確率として用いるLOCPRIRモデルを用いた方が明瞭なクラスタリング結果が得られた。しかし、これはバヌアツを含んだ検討である。バヌアツは明瞭な集団分化を示す単体でのグループを形成している。 以上の検討により、①アフリカからの原虫の移動のパターンと②薬剤耐性原虫のアジアからの移入パターンが原虫の集団構造を形成している可能性が見えてきた。 今後の検討点として、3で示した集団のグループ構造についてはさらなる検討の余地があると考える。具体的には解析マーカーをさらに増やすことが必要になろう。現在9つのマーカーを用いた解析を実施しているが、まずは数個マーカーを増やし、グループ構造解析の精度を上げる必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度の目標はほぼ達成することができた。ただし、上述したように集団のグループ構造についてはさらなる検討の余地があると考えられ、区分を(2)にした。
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Strategy for Future Research Activity |
集団間の移出入レベルを解明するために、遺伝子の解析マーカーを増やすことにより、グループ構造解析の上げるようにする。さらに、グローバルな原虫集団構造と薬剤耐性の進化系統との関連を明らかにする。薬剤耐性原虫の出現起源についてはまだ十分に解明されているとは言えない。タイ国境のみならず南米、パプアニューギニア、フィリピンにも薬剤耐性の起源地がある。これらと原虫の移動の関連を明らかにするため、薬剤耐性遺伝子多型解析をさらに進める。クロロキン、ファンシダール耐性と関連するpfcrt、dhfr、dhps、pfmdr1についてはほぼ終了しているが、アルテミシニン耐性と関連する遺伝子についても検討する。さらに、耐性遺伝子に連鎖するマイクロサテライト多型解析による耐性進化系統解析を進める。 これらの結果を総合し、薬剤耐性原虫のグローバルな移動ダイナミズムを解明する。
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Causes of Carryover |
次世代シークエンサーによる解析を予定していたが、野外検体であるためヒト白血球の除去が必要となる。この作業の適正化に時間がかかり、解析にたどり着いていない。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現在保有する試料の多くはヒト白血球を含んでいる。次世代シークエンサーを用いての全ゲノム解析をすすめるには上述した解析前処理の適正化が必要となる。まずこの点を進め、解析が可能なプロトコールができたらゲノム解析を実施する予定である。
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