2015 Fiscal Year Research-status Report
ABC型トランスポーターによる細菌病原性制御機構の解明
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26460524
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
西野 美都子 大阪大学, 産業科学研究所, 助教 (30510440)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 異物排出 / トランスポーター / ABC型 / マクロライド / 薬剤耐性 / 宿主相互作用 / 細菌 / サルモネラ |
Outline of Annual Research Achievements |
異物排出トランスポーターは、抗菌薬を含む異物を細胞外へ排出することにより細菌に薬剤耐性をもたらす。近年の研究から、これら異物排出トランスポーターが、抗菌薬耐性以外にも重要な生理的役割を担っていることが分かりつつある。グラム陰性菌において世界で初めて同定されたABC(ATP共役)型異物排出蛋白質MacABは、マクロライド系抗菌剤を特異的に認識して耐性に関与していることが分かっている。また、サルモネラにおいてMacABはマウスに対する本菌の致死性に関係しており、この遺伝子欠損株のマウスに対する病原性は野生株に比べて弱くなっていることが知られている。本計画では、細菌のABC型異物排出蛋白質の宿主細胞感染における役割や薬剤耐性への関係を調べるとともに、構造解析を目的として研究を進めている。 今年度は、MacABトランスポーターが、細菌宿主感染時においてどのような生理的役割を担っているのかを明らかにするために、サルモネラ野生株ならびにmacAB遺伝子欠損株を作製し、細胞感染実験を行った。その結果、遺伝子欠損株は宿主細胞中での増殖能力が低下しており、また、細胞内においてその発現が大きく誘導されることが明らかになった。遺伝子欠損株は野性株に比べて酸化ストレスに対する抵抗性が低下していることも分かりつつあり、この現象がマウスに対する致死性の低下と関係していることが考えられた。さらなる解析のため、MacAB発現株を用いた阻害剤のスクリーニングを行い、いくつかの候補化合物を得た。また、異物排出トランスポーターが細菌バイオフィルム形成維持に関与しているなどの新しい発見があった。今後は、阻害剤を用いて細菌宿主相互作用に与える影響等について解析を進める必要があると考えている。研究成果については、科学雑誌や学会等で発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
異物排出蛋白質が細菌の宿主細胞内生存に関与しているという新たな生理的役割を発見し、さらにはバイオフィルム形成維持における役割解明など、新たな進展があった。数多くの排出トランスポーターの生理機能が不明な状況において、本研究は、その生理機能を明らかにするという点で重要であり、新薬開発においてもターゲティング分子として重要な情報が提供できると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、異物排出トランスポーターの詳細な機能を解明するため、トランスポーター阻害剤に関するスクリーニングを継続してすすめるとともに、阻害剤の持つ効果について既存抗菌薬との相乗作用や、病原性におよぼす影響などについて解析を進める予定である。また。排出トランスポーターの局在や宿主感染時における変化や構造についても研究を推進したいと考えている。
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Causes of Carryover |
主に物品費と人件費が当初予定していたよりも支出が少なくなったため、次年度使用額が発生した。研究の推進に特に影響はなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
遺伝子欠損菌株等の構築に必要な消耗品を中心として、発生した次年度使用額を使う予定である。
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Research Products
(4 results)