2015 Fiscal Year Research-status Report
細菌分子による宿主細胞外マトリックスの認識機構の解明と薬物シーズの探索・顕在化
Project/Area Number |
26460527
|
Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松下 治 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (00209537)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内田 健太郎 北里大学, 医学部, 講師 (50547578)
美間 健彦 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (80596437)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細菌毒素 / コラーゲン結合ドメイン / 細胞外マトリックス / 膠原線維 / アンカーリング / 骨新生 / 再生医療 / 技術移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
Clostridium属細菌のコラゲナーゼのC末端にはPKDドメイン(PKD)とコラーゲン結合ドメイン(CBD)が存在する。本領域を用いて塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)をコラーゲン基剤にアンカーリングし、骨新生を誘導する複合剤を開発した。従来型の基剤は動物由来であるため、未知の病原体感染や免疫反応惹起の可能性があった。 以前の研究で、CBDは合成コラーゲン様ペプチド(Pro-Hyp-Gly)10三量体に結合することを示した。近年このペプチドのポリマー[(Pro-Hyp-Gly)10]3nが量産可能となった。合成ペプチドは病原体を含まず抗原性も低い。加えて物性がゲル状で骨折部位に容易に注入し得る。そこで、動物由来基剤に替え本ポリマーにbFGF-PKD-CBDを結合させた複合剤を作製した。動物モデルを用いてこの新規複合剤の骨形成能を調べたところ、新規複合剤群は対照群(新規基剤にbFGF単体を添加)に比し有意に高い骨新生能を示した。 他方、細菌性コラゲナーゼにはタンデム・リピートしたCBDを持つものもある。このような酵素(クラスⅠ)由来のアンカーを用いた融合タンパク質(bFGF-CBD-CBD, bFGF-CBD)と従来型酵素(クラスⅡ)由来のアンカーを用いた融合タンパク質(bFGF-PKD-CBD, bFGF-CBD)を作製した。これらの融合タンパク質のin vitroにおける細胞増殖促進能とコラーゲン結合能はいずれも同等であったが、各融合タンパク質を新規基剤にアンカーリングしたところ、in vivoではbFGF-CBD-CBD群が他群に比し有意に高い骨新生誘導能を示した。 さらに、融合タンパク質bFGF-PKD-CBDのリンカー部の短縮により有意に骨新生能が低下したことから、リンカー部が生体内で切断されてbFGFが遊離する可能性が示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
コラーゲン結合型塩基性線維芽細胞増殖因子とコラーゲン基剤を用いた骨新生誘導システムに、全く新しい合成ポリマー基剤を用いることで、感染と免疫反応の可能性を排除しつつ注射薬としての使用を可能にした。これらはいずれも臨床応用上極めて重要な特性であり、医療者から強く求められた点に対応する大きな改良を行なうことができた。さらに、2種類の細菌性コラゲナーゼに由来する4種類のコラーゲン・アンカーと塩基性線維芽細胞成長因子の融合タンパク質と新規ポリマー基剤を組み合わせた複合材料の骨新生能を検討したところ、研究計画で期待されたようにアンカー部の種類・構成により骨新生誘導能が異なることが明らかになった。他方で予想に反して、リンカー部も重要な機能を有することも明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
アンカー部の種類・構成により骨新生誘導能が異なっていたが、現時点では、基剤への結合能の高いアンカーが成長因子を長く組織局所に残留させて高い骨新生誘導能を示すと予想される。このことを確かめるため、まず、表面プラズモン共鳴法を用いて、in vitroにおけるアンカー部の新規ポリマー基剤への結合能を定量する。複数ドメインからなるアンカーが結合し得るよう長鎖の(Pro-Hyp-Gly)nペプチドを合成し、センサー・チップに固相化した後、平衡に達するまで種々のアンカー部をペプチドに結合させて、結合量から結合定数を算出する。次に、動物モデルを用いて融合タンパク質の組織内局所残留時間を明らかにする。部位特異的変異により、種々のアンカー部のN末端部にCys残基を導入する。Alexa Fluor C5-maleimideを用いて各アンカーを蛍光標識し、新規ポリマー基剤に結合させて、局所に注射する。蛍光顕微鏡を用いて経時的に採取した組織内の蛍光強度を観察して、アンカー部の消長を定量化する。またリンカー部を改変した2種類のコラーゲン結合型線維芽細胞成長因子の成長因子側を同様に標識し、組織内での成長因子の消長を観察する。これにより組織内でのリンカー部の切断が本複合材の作用機序に含まれるか否かも明らかにする。
|
Causes of Carryover |
物品購入の際、想定した価格よりも廉価に購入することができたため、若干の次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
概ね計画どおりに推移しているので、次年度使用額も含めて、表面プラズモン共鳴、部位特異的変異導入、各タンパク質の生産と精製に必要な試薬類を購入する予定である。また、共同研究先の北里大学を計画どおり訪問してモデル実験に関する情報交換を行なう予定である。設備備品を購入する予定は無い。
|
-
-
-
-
-
-
-
[Patent(Industrial Property Rights)] 神経再生用移植材料、神経再生用移植材料の製造方法、及び神経再生用移植材料製造用キット2015
Inventor(s)
内田,井上,藤巻,高相,佐久,礒部,松下,美間,西,服部,田中他
Industrial Property Rights Holder
北里研究所、香川大学、株)アトリー、株)ニッピ
Industrial Property Rights Type
特許
Industrial Property Number
PCT/JP2015/079334
Filing Date
2015-10-16
Overseas