2014 Fiscal Year Research-status Report
ボルデテラ属細菌のBopCによるアクチン依存的ネクローシス誘導機構の解析
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26460535
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
桑江 朝臣 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (60337996)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ボルデテラ / エフェクター / III型分泌装置 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くのグラム陰性病原菌はIII型分泌機構と呼ばれる分泌機構をもっている。III型分泌機構からはエフェクターと呼ばれる一群のタンパク質が分泌される。エフェクターはIII型分泌装置を介して菌体内より宿主細胞内へ注入される。本研究では百日咳菌に代表されるボルデテラ属細菌の産生するBopCとよばれるエフェクターの機能解析を行っている。 BopC全長をコードするプラスミド,BopCのN末端側の領域をコードするプラスミド,BopCのC末端側の領域をコードするプラスミドを構築し,大腸菌に導入して,組み換え体としてBopCを精製したところおおむね計画どおりに精製することができた。プルダウン試験を行い,精製した各タンパク質間の相互作用の有無を調べたところ,BopCのN末端側とC末端側の相互作用が強く示唆された。 BopCの各領域をコードするDNA断片を哺乳類細胞用の発現ベクターに挿入した。構築した各プラスミドをCOS7細胞に導入し,細胞死の誘導を乳酸デヒドロゲナーゼの培地中への遊離を指標に調べた結果,BopC内の200-312番目の領域および400-658番目までの領域が細胞死の誘導に必要であることが強く示唆された。 BopCを欠損する気管支敗血症菌を樹状細胞株であるDC2.4に感染させゲンタマイシンプロテクションアッセイ法を用いて,貪食された菌量を測定したところ,野生株と比較してBopC欠損株は貪食される量が多かった。このことよりボルデテラはBopCによって貪食運動を阻害することで,殺菌作用から免れていることが推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
BopCの組み換え体を精製するためのプラスミド構築,および大腸菌内での目的タンパク質の産生は計画通りに進行した。 BopCの各領域をコードするDNA断片の哺乳類細胞用の発現ベクターへの挿入もほぼ計画通りに進行した。 気管支敗血症菌が樹状細胞などの貪食細胞に貪食される量を定量的に示すためにゲンタマイシンプロテクション試験の条件検討を行い,気管支敗血症菌を殺菌するために必要なゲンタマイシンの濃度,およびインキュベーション時間等を決定した。 BopC依存的なネクローシスはアクチン重合阻害剤であるサイトカラシンDなどのいくつかの阻害剤によって阻害されることが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
新たなホモロジーサーチプログラムを用いた結果,BopCと類似する構造を有する既知のタンパク質が検索された。BopCの機能を明らかにするために,検索されてきた既知タンパク質の機能と同様の機能をもつかどうか解析を行う予定である。また構造的に相同性を有するタンパク質と相互作用する宿主側タンパク質について,そのタンパク質がBopCと相互作用するかどうか,組み換えタンパク質を精製することによるプルダウン試験などにより確認する。相互作用が確認された場合は,その標的タンパク質をsiRNAによりノックダウンした哺乳類細胞に気管支敗血症菌を感染させ,BopC依存的な細胞死が誘導されるかどうかを調べる。 Super folder GFP (sfGFP)というGFPは通常のGFPとは異なり,産生直後から蛍光を発する性質をもつ。sfGFPとBopCの誘導タンパク質をコードするDNA断片を構築し,この断片をTet-Expressというタンパク質で誘導可能なプロモーターの下流に挿入する。このプロモーターとBopC-sfGFPをコードするDNA断片をHeLaやDC2.4などの哺乳類細胞内の染色体上へ挿入し,安定的なクローンを得る。この安定的クローンをCCDカメラを装備したタイムラプス撮影機能をもつ共焦点レーザー顕微鏡下で観察し,Tet-Expressで誘導をかけた直後からBopCが宿主細胞内をどのように動いているのか解析する。
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Causes of Carryover |
BopCの分子内/分子間相互作用や,BopCの細胞死誘導活性に必要な領域の同定は当初の予定より順調に進んでいたが,当該年度に予定していた宿主シグナル伝達経路の解析については時間の都合上着手できなかった。そのために購入を予定していた抗体等の試薬類を当該年度には購入しなかった。また動物実験についても当該年度では行うことができなかったため,動物やその後の切片作成などに使用する消耗品および試薬類を購入しなかったため次年度に研究費を繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究計画に記載した宿主シグナル伝達経路を解析するための阻害剤や,各タンパク質に対する抗体,および蛍光顕微鏡で検出するための二次抗体など購入する。動物実験を行う場合のマウス,マウスから気道や肺を切除し,切片を作製するために用いる消耗品,およびそれらの切片を蛍光染色するために使用する試薬等を購入するために研究費を使用する。またさらにBopCの活性に必要な領域を明らかにするために新たなプラスミドの構築等を行う予定であり,プライマー,PCR酵素,DNA精製キット,DNA結合酵素,大腸菌のコンピテントセル,プラスミドの精製キットなどを購入する。細胞培養に必要な培地,ウシ胎児血清,抗生剤,培養フラスコなどを購入する。
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Research Products
(1 results)