2015 Fiscal Year Research-status Report
ボルデテラ属細菌のBopCによるアクチン依存的ネクローシス誘導機構の解析
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26460535
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
桑江 朝臣 北里大学, 感染制御科学府, 准教授 (60337996)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | III型分泌装置 / エフェクター / ボルデテラ属細菌 / 百日咳 / ネクローシス / 貪食阻害 |
Outline of Annual Research Achievements |
百日咳菌を含むボルデテラ属細菌がIII型分泌装置より分泌するBopC(BteAとも呼ばれる)の機能解析を行った。BopCは分子内および分子間で相互作用することが示唆されていたが,本研究で行ったプルダウンアッセイの結果より,BopC(全長658アミノ酸)のN末端側の領域(1 - 312アミノ酸領域)とC末端側の領域(313 - 658)アミノ酸の領域が相互作用すること,およびC末端側の領域同士で相互作用することが強く示唆された。BopCは哺乳類細胞内に移行した後にネクローシスを誘導するが,そのネクローシス誘導に必要な領域はN末端側の200 - 312アミノ酸領域と400 - 658領域の離れた2箇所に存在することが明らかになった。BopCを産生・分泌する野生型の気管支敗血症菌をラット肺上皮細胞由来のL2細胞に感染させるとBopC依存的にネクローシスが誘導されるが,L2細胞を予めサイトカラシンDやラトランキュリンBなどのアクチン重合阻害剤で処理を行うと,BopC依存的なネクローシスの誘導が阻害されることから,BopCによるネクローシスの誘導にはアクチン重合に関わるシグナル伝達経路の活性化が必要なことが示唆された。また,マクロファージや樹状細胞由来の細胞株に気管支敗血症菌が貪食される効率を測定したところ,BopCを産生・分泌する菌株では,BopCを産生・分泌しない菌株より有意に貪食される菌量が低いことが明らかになった。以上のことからBopCは感染の過程で貪食細胞による貪食を阻害し,ボルデテラ属細菌はBopC依存的に殺菌作用から免れることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画書に示した,本研究で明らかにする以下の項目,1. BopCの分子内・分子間の相互作用に必要な領域,2. ネクローシスを誘導するために必要なBopC内の領域,3. 宿主細胞内におけるBopCの局在,4. BopC依存的なネクローシスに関わる宿主シグナル伝達経路,5. BopCと相互作用する宿主側因子,6. BopCの貪食阻害活性の有無,7. in vivoにおける気管支敗血症菌および貪食細胞の局在,のうち1, 2, 4, 6に関してはおおむね計画通りに実験が進んだ。その他の項目については現在解析を行っているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
計画書に示した,本研究で明らかにする項目のうち,3. 宿主細胞内におけるBopCの局在,5. BopCと相互作用する宿主側因子,7. in vivoにおける気管支敗血症菌および貪食細胞の局在,に関して研究を進めていく。宿主細胞内におけるBopCの局在は強力な蛍光強度を有するsfGFPを入手し,BopC-sfGFPの融合タンパク質を誘導的に発現するL2細胞を作製し,ライブイメージングによりBopCの宿主細胞内における挙動を解析する。BopCと相互作用する宿主側因子の同定は,大腸菌で精製したBopCと結合する因子を哺乳類細胞の溶解液中よりプルダウンアッセイを用いて同定を試みる一方で,酵母や細菌を用いたtwo-hybrid試験による同定も試みる。in vivoにおける気管支敗血症菌や百日咳菌の局在とBopCの局在については本学内で動物実験を行っている薬学部の研究室との共同研究により詳細な解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
プルダウンアッセイを用いてBopCの分子間・分子内相互作用を解析する場合に,様々な部分欠失変異体を作製して,条件を検討する必要があると考えていたが,BopCのN末端側(1 - 312)部分とC末端側(313 - 658)部分の部分欠失変異体を精製し,試験を行ったところ予想外に順調に結果が出た。そのために当初予定していた試薬代を使用しなくて済んだ。また動物実験などを着手しようと考えていたが,論文投稿後のレビュアーからのコメントの内容から,培養細胞を用いた確認実験を多く行わなければならず,動物実験に着手することができなかった。これらのことが当初予定した額を使用しなかった理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度はBopC依存液なネクローシスに関わる宿主シグナル伝達経路に関して,アクチン重合に関わるシグナル伝達経路を中心にさらに詳細な分子メカニズムについて解析を行う。そのための抗体や阻害剤などを購入する予定である。動物実験などについても,着手する予定であり,動物や切片作成のための試薬などを購入する。またBopCと相互作用する分子を探索するために,大腸菌で精製したBopCと哺乳類細胞の溶解液を混合し,BopCと結合するタンパク質をMALDI-TOFMSで解析する予定であり,そのために使用する試薬などを購入する。
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Research Products
(6 results)