2016 Fiscal Year Research-status Report
黄色ブドウ球菌における表現型スイッチングと持続感染の成立について
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26460536
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
崔 龍洙 自治医科大学, 医学部, 教授 (50306932)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 黄色ブドウ球菌 / 持続感染 / ゲノム逆位 / Flip-flop inversion / phenotype switching / heterogeneity / 多剤耐性 / MRSA |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、本研究で目的とした持続感染設立機能の解明ついて、持続感染の成立にはSCVsとLCVsの共存が必須であるとの所見を得ることができた。そのエビデンスとて、1)マウス慢性感染モデルを用いると、SCVsを感染させた場合には4週間で生体から菌が消失したが、細胞障害性(毒素産生性)のLCVs(表)を感染させた場合では4週間にも渡る持続感染が成立した。この時、感染巣中の菌はほぼSCVsに変化していたことも分かってきた。2)菌のバイオフィルム(菌を守る防護壁)形成能はLCVsの方がSCVsよりも高かったが、バイオフィルム中の菌も一部がSCVsに変化していた。3)感染期間中の菌のタイプを経時的に観察すると、SCVs感染の場合では全期間でSCVsが分離されたが、LCVs感染の場合では感染経過とともにSCVsの割合が増えていった。これはSCVsの方がLCVsよりも免疫回避能が高いためと考えられる。一方、LCVsの感染後、化学療法を行うと一度はSCVsに変化した菌が再度耐性菌であるLCVs(表)に再変化する。また、線虫カエノラブディティス・エレガンス (C. elegans)のブドウ球菌感染モデルでは、LCVs感染組では4日目に全匹が死亡したに対し、SCV感染組は10日まで感染が続いた。 以上の結果から、1)感染初期にLCVsが産生した毒素が組織を障害し、至適な感染の場を作り、2)感染中期にLCVsがバイオフィルムを形成することで強固な防護壁に囲まれた感染巣を構築し、3)感染後期に菌が免疫回避に有利なSCVsと化学療法に抵抗するLCVsの2つの性質を使い分けることで持続感染が成立するという感染モデルが考えられる。以上の結果は、過去の先行研究では重要視されていなかったLCVsが、SCVsと同様に持続感染において重要な役割を担っている可能性を示唆する。即ち、本菌の表現型スイッチングが、生体防御の回避能力を持つSCV型を維持したことで長期間を渡る持続感染が成立した遺伝学的要因であると結論付けられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究概要で述べたように、本研究は概ね当初計画の通り進んでおり、目標の達成はほぼできている。しかし、動物実験のデータをより確実のものにするため、再現性を取る必要があると判断し、研究期間を1年延ばすことにした。予算の繰越額は323,854円ある。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、作成した遺伝子の欠損、相補、置換等の変異株を用いて構築した感染モデルでのSCVsとLCVsの感染持続性や病原性について、実験動物の数を増やして、これまで観察した結果を検証する。また、SCVsとLCVs間に存在するベターラクタム抗菌薬感受性の相違についてもその機構を解明したい。
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Causes of Carryover |
年度始めの計画より動物実験の追加が必要になったが、実験動物の追加注文が間に合わなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残金320,854円全部を実験マウスの購入に使用する。
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Research Products
(1 results)