2015 Fiscal Year Research-status Report
HIVによるT細胞脂質ラフト機能停止の抗ミリストイル基ダイアボディによる機能回復
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26460551
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
林 宣宏 東京工業大学, 生命理工学研究科, 准教授 (80267955)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | プロテオミクス / 生体膜脂質ラフト / HIV / AIDS |
Outline of Annual Research Achievements |
課題1 ラフトの動的構成因子の同定(HIV-Nefが侵入するマイクロドメインの本来の動作の解析1):先に確立した手法によりJurkat細胞のラフトを調製し、本研究室独自の二次元電気泳動法により解析を行った。その結果、顕微鏡観察では同じに見える細胞から調製したラフトのプロテオミクスデータ(二次元電気泳動画像)に違いが見出され、細胞の状態には通常の顕微鏡観察では分からない違いがあることが解った。そこで、細胞の培養方法を工夫することで、プロテオミクスのレベルでも同じ状態の細胞を調製する方法を構築した。
課題2 構成因子の1分子観察(HIV-Nefが侵入するマイクロドメインの本来の動作の解析2):機能を阻害しない部位を蛍光色素で標識したHIV-Nefを共同研究先から得て、これをリコンビナントNMT(ミリストイル化酵素)を用いて、in vitroでミリストイル化した。この蛍光標識HIV-Nefを、GFP融合型のラフトマーカー(LAT)を発現しているJurkat細胞に導入することで、HIV-Nefとラフトの共局在を観察した。他方、ミリストイル化されていないHIV-Nefもラフトへの局在が見られ、ミリストイル基依存的な移行以外のラフト局在メカニズムが存在する可能性が示唆された。
課題3 HIV-Nefの機能を制御するダイアボディの開発:抗体ライブラリーを用いたHIV-Nefの標的化に使用する抗体の開発を行った。その結果、非常に結合力が強い抗体がひとつと、それよりは結合力が弱いと考えられる二つの抗体のクローニングに成功した。この抗体と、先にクローニングした抗ミリストイル基抗体をつなげたダイアボディを用いた、HIV-Nefの細胞内局在化の阻害による、AIDS発症の治療を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
他の対象では成功していた部位特異的標識が、HIV-Nefでは非常に難しいことが分かった。本研究では、共同研究により、無細胞タンパク質合成系を用いて充分量の部位特異的標識HIV-Nefを得ることが出来た。 HIV-Nefの標的化に用いる抗体(抗HIV-Nef抗体)のクローニングに関しては、想定外の成功があり、当該抗体は、本研究以外にも非常に有用と考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
プロテオミクスに関しては、実験系の構築を終えた。本年度より、HIV-Nefの有無、また、細胞の状態に応じたラフト構成因子の変化を調べる。 1分子観察に関しても、HIV-Nef、カルモジュリン、LAT(ラフトマーカー)相互の位置関係が、HIV-Nefの有無、また、細胞の状態に応じてどう変化するかを調べる。 今回、標的化に用いる抗体の開発において、非常に高性能の抗HIV-Nef抗体のクローニングに成功したので、ダイアボディの作製を開始すると共に、その性能を評価系において調べる。
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