2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26460571
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
緒方 正人 三重大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60224094)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 慢性炎症 / MAPキナーゼ / マクロファージ / 代謝症候群 / p38 / 遺伝子改変マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性炎症は、代謝症候群やがんなどを含む病態と密接な関係を有する。p38alpha MAPキナーゼ(MAPK)経路が感染や様々な起炎物質による炎症制御に関わることは既に報告されているが、肥満による慢性炎症制御における役割は明らかにされていない。 我々はこれまで、Tie2-Creトランスジェニックマウスを用いてp38alpha遺伝子を血球系で特異的に欠くコンディショナルノックアウトマウスを作成し解析してきた。このマウスでは、高脂肪食投与で脂肪組織に見られる炎症性サイトカイン遺伝子の発現やM1様マクロファージ(F4/80+, CD11c+)の浸潤が低下することを見出した。そこで脂肪組織のM1様マクロファージをソーティングし、サイトカイン遺伝子発現を調べたが、大きな変化は見出さなかった。一方でCCR2やCCR5など、細胞遊走に関わるケモカイン受容体の遺伝子発現が低下していた。CCR2やCCR5は、高脂肪食投与以前のノックアウトマウス腹腔細胞(PEC)で既に低下しており、これが肥満時の脂肪組織への細胞浸潤低下を介して慢性炎症を抑制すると考えられた。興味深いことにこのマウスでは、インスリン抵抗性のみならず体重増加も抑制され、血球細胞が代謝を制御する可能性が示された。代謝制御に関わる細胞を同定するため、CD11c細胞特異的コンディショナルノックアウトマウスを作成したところ、同様な体重増加やインスリン抵抗性の抑制が見られ、CD11c陽性細胞におけるp38alpha経路の関与が明らかになった。 上記血球系特異的コンディショナルノックアウトマウスでは、脂肪肝の抑制も認めている。肝でF4/80やCD11cなどのKupffer細胞マーカーやIFN-gammaなどの遺伝子発現の低下を認め、これらが脂肪肝の形成低下に関連した可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Tie2-Creトランスジェニックマウスを利用して作成した血球系特異的なp38alphaコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を投与した際、脂肪組織に浸潤したM1様マクロファージ(F4/80+, CD11c+)と炎症性サイトカイン遺伝子発現がともに減少することは既に見出していた。一方、p38alpha経路が血球系細胞中のどの細胞で働くことによるのか、また、どのようなメカニズムを介するのかは必ずしも明らかでは無かった。そこで、M1様マクロファージを単離して解析したところ、炎症性サイトカイン遺伝子発現には大きな影響がないものの、ケモカイン受容体の発現が低下していること、ケモカイン受容体の低下は肥満誘導以前から既に生じていることを明らかにできた。また、体重増加に関わる血球系細胞については、CD11c特異的なコンディショナルノックアウトマウスで体重増加とインスリン抵抗性が共に低下することを示した。以上から、CD11c細胞のp38alpha経路がインスリン抵抗性の悪化と肥満促進の両方に関わることを示すことができ、今後の解析の基盤を確立できた。 また、代謝系の変化が関わる脂肪肝については、肝での慢性炎症に関わる可能性のあるKupffer細胞のマーカーやIFN-gammaなどの遺伝子発現の低下を明らかにでき、血球系細胞のp38alpha MAPキナーゼ経路が炎症性変化を介して肝細胞の脂質代謝に影響を及ぼす可能性を示すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまで主にTie2-Creトランスジェニックマウスを利用して作成した血球特異的なp38alphaコンディショナルノックアウトマウスに高脂肪食を投与した際の浸潤細胞や慢性炎症について解析してきたが、CD11c特異的コンディショナルノックアウトマウスなど、より細胞腫を絞り込んだマウスでの解析も進める予定である。また、p38alphaコンディショナルノックアウトマウスで見られる体重増加の抑制や脂肪肝の形成の低下は、病態解析のみならず血球系細胞が代謝に影響を及ぼすメカニズムを解析する糸口ともなる。その際、脂肪細胞や肝細胞において発現が変化する遺伝子を明らかにすることは、代謝が制御される機構を明らかにすると同時に、それを指標とすることによって、脂肪細胞や肝細胞に影響を及ぼす血球系細胞由来因子のスクリーニング系の構築を可能とする。脂肪細胞については、アディポネクチンなどの遺伝子発現が変化することを見出しているが、肝細胞についても発現が変化する機能的遺伝子を検索する予定である。
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Research Products
(2 results)